• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第27章 嵐の前触れ



土曜日。

「堪忍なぁ。付き合わせてもうて」

とんでもないです、と隣で微笑む真珠。

「確かに、お笑いって向こうのコメディとも違って、日本独特の文化かも」

盲点だったなぁ、とリストアップした都内の劇場を確認する。

「意外とあるねぇ」
「渋谷か新宿やったら、バス電車使て行けるけど、神保町と下北沢は遠いな」
「皇居とか見に行くなら、神保町、近いけどね」
「一応、組んだスケジュール通りに動いて、時間見てみよか」
「はーい」

真珠は、腰の大きめのリボンが目を引くアンクル丈のパンツ。ふんわりとした袖の白いシアーシャツの下に、同色のチューブトップを着ている。

「なんや、マコトの方が乗り気やん」
「旅行の計画練るみたいで楽しくない?」
「そういうもんか?」
観光スケジュールの下見に、俺は助かるけど、と言う侑士も、今日は制服では無く、クリームのサマーニットに黒のパンツ。

駅へ向かう道に、ねえ、と背の高い横顔を見上げる。

「山手線?」
そんつもり、と少し歩調を緩めて、真珠の手を取った。

「景色見るんやったらバスもええけど、空港着いてからの移動はずっとバスらしいからな」
「んー、」
隣を歩きながら何か考える。

「ドイツの交通事情ってどんな感じ?」
せやねぇ、と指を絡めて繋ぐ真珠の手を少し、引き寄せた侑士。

「バス電車は結構便利やで。
 地下鉄もトラム言う路面電車もあるし、東京とそう変わらへんな」
「モノレール、あったりする?」

上を指さす真珠に、モノレール?と見上げる。

「街中を見下ろせるし、楽しめるかも」
頭上を行き交う車両に、侑士は顔を顰めた。

「はいっ山手線にしようっ!
 環状線っ!お天気悪くてもスムーズっ」
行きましょう!と侑士の手を引いて歩き出した真珠。

(しまった。ゆう、高いところ苦手だった)
忘れてた、とチラリ、隣を見上げる。
「ん?」
その視線に気づいて、どないしたん?と聞く侑士。

(『天下無敵!』みたいな顔して、意外とかわいい人なんだよね)

非科学は信じない、みたいな性格なのに心霊もの怖がるし、と見上げる横顔。

「何や言いたそうやな」
言いや、と繋いだ手の指を引き寄せられる。

「ゆうがかわいいってだけ」
「人ん事、言うとる場合か?」

パールの飾りがついた髪留めが煌めく髪を撫でた。

 ✜
/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp