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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第25章 キミノコエ


全体合唱のサビが終わるとピアノソロになる。

(確か、このあとからソロの歌唱...)

先に歌ったクラスはみんなそうだった、とピアノの間奏を聴く。

ソプラノのソロから再度、始まる。

(歌唱箇所は、それぞれ違うんだ)
歌われるソロパートに侑士を見る。

(あれ?男の子の低音のソロは無し?)
もう終盤、という頃に、指揮者が端のバリトン、バスの生徒の並びに指揮棒の先を向けた。

「♪いつか恋する君のために〜」

え、と言ったのは、隣の恵里奈も同じだった。
伸びたソロの歌声は、握られた指揮者の手に止まる。
今...と、拍手すら忘れる。

「ゆうちゃんが歌ったよね?」
「う、うん」
「ソロ、歌ったよねっ!?」
コクコクと恵里奈の言葉に頷く。

「言わなかった理由、これっ!?」
にやけている恵里奈に、真珠は呆然とステージを見る。

伴奏者が変わり、再度構えた指揮者。
穏やかなピアノのあと、女生徒のハミングから始まる自由曲。
6分弱の音楽が終わり、指揮者が振り向き、伴奏者が立ち上がった。

拍手の中、降壇していく生徒たち。

ライトから外れたところで、教員に肩を叩かれている侑士がいた。

 ✜

「おっと」
続く発表の最中。
恵里奈の声にどうしたの?と聴く。

見せられた携帯の画面には『侑ちゃん』のトークルーム。

ジロッ、と鋭い目つきの犬のイラストだけが送られてきていた。

「恵里奈にも気づいてますね」
「ちぇー」
可愛らしい女の子が、てへ!と舌を出しているイラストを送る恵里奈。
「レコード1枚、奢るから、と」
直ぐに返信が来た。

-2曲やったから2枚-

「しっかりしてらっしゃる」
「マコ、ちゃうで。これは『しっかり』やのぉて『ちゃっかり』や」
そうかも、と笑っていると、ステージにスポットライトが差し込み、一人の教員がマイクを手にお辞儀をした。

これから採点に入るため、休憩になるようだ。

「どうしょうか?」
「どうせばれてるし、最後まで見よか」

そうだね、と、明転した客席で少し、伸びをする。

 ♪〜

スピーカーから突如流れ出した音楽。
ステージ奥の壁に投影された画面に、客席がざわめいた。

「『EXHIBITION』?」
非公式?と首をかしげる真珠。
「『展覧会』とか言う意味も、あるけどね」

なんやろ?と恵里奈は立ち上がりかけた席に座り直した。
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