She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第25章 キミノコエ
✜
「ゆうちゃん、めっちゃ余裕やん」
本読んどる、と前方の席に座る侑士の後ろ姿に恵里奈が言った。
「マコが来てるって教えたら、ビビるかな?」
「やめてあげて。
黙って見に来てるんだから」
かわいそうよ、と真珠は上階から、脚を組んで悠々と本を読んでいる侑士を見下ろす。
「ゆうって、こういうの緊張する性格じゃないと思うんだけど」
「緊張はしてないやろね」
けど、と恵里奈は続けた。
「恥ずかしがるタイプではある」
「それは、確かに」
動画もちょっと照れてたし、と、読書を続けている背中を見る。
「私、外で待ってようかな」
「今更?」
「なんか、ゆうに申し訳なくなってきちゃって」
ちら、と出入り口を見る真珠。
「知らへんのやから、ええんちゃう?」
「そうかなぁ」
うーん、と唸る真珠に、恵里奈がふふ、と笑う。
「見たい自分とゆうちゃんに申し訳なく思う自分が、葛藤しとるね」
「そうなんだよ」
「私のせいにしたらええよ。
『もう終わったことやし』って、あん子なら許してくれるて」
「さすが、お姉ちゃん」
止まった音楽に、拍手をする。
「こんクラスの自由曲終わったら、ゆうちゃんのクラスの番や」
「私、ゆうの声、わかるかな?」
「あん子、声、低いからねぇ」
ハキハキ喋る方とちゃうし、と構えた指揮者に静になるチャペル内。
(このクラスは『My Revolution』か)
J-pop多めだなぁ、と耳を傾ける。
(課題曲には各パート、ソロ担当がいるんだ)
ゆうはそういうタイプじゃないなぁ、と覚えている歌詞を唇で口遊む。
(青春だなぁ)
男の子の歌声って新鮮、と女子校の母校でも開催されていた合唱コンクールを思い出す。
(私、なに歌ったっけ?)
なんだったかなぁ?と考えてみるが、歌を聴きながらだと思い出せない。
(ゆうは、なにを歌うんだろう)
謝れば許してくれるかなぁ、と、アレンジを加えられた合唱に無意識にリズムを取る。
(勝手に聞いたら怒っちゃうかな?)
動画の時は怒ってる感じじゃなかったけど、と見ていたステージからふと客席に目を向ける。
(あ、)
半身に振り返っていた侑士と、バチッ、と目が合ってしまった。
(やっちゃった)
気付いたよね、と苦笑いをして、なんとなく小さく手を降ってみる。
バッグに入れていた携帯が光った。