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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第25章 キミノコエ



 ✜

一応、歌詞は全て頭に入っていたので、メロディを確認する。

「♪いつーか恋する 君のため〜に〜」
指揮役が握った手に音を止める。

忍足君、上手!とクラスメイトの女生徒に言われ、おおきに、と苦笑い。

課題曲には各パートのソロがあり、1年の課題曲は、最後をバリトンのソロが締めることになっていた。
教師の指定で担当を決めたのだが、もしかしたら休んだ彼にはプレッシャーだったのかも知れない。

「よりによって最後の締めだもんな」
向日の言葉に、他の男子から哀れみの目を向けられた。
「かわいそうに」
「そない言うなら変わってくれ」
同じ音程を歌うクラスメイトに溜息をつく。

「最後、黙ったろかな」
ふふふ、と笑う侑士に、やめてくれ、と指揮役が慌てた。

「引き受けたんだから、最後までやりきれよ」
「わこうてるって」
ちゃんとするよて、と頷く。

「ソロ、課題の方だけでええんよね?」
「自由曲もする?譲るよ?」

どうぞどうぞ、と差し出されたソロを受け持つ生徒の手に、熨斗つけて返す!とテニスのフォームで打ち返す。

「折り返しのところやし、みんな、寝とるやろ」
「ダレる頃ではあるよな」
「全員、寝とけっ」

頼む!と足掻く侑士の肩を、優しさが仇になったな、とテノールのソロを務める生徒が組む。

「いや、あんさん、ソロにノリノリで立候補した側やん」
「そうだっけぇ?」
「すっとぼけが」
じと、と見ると、まあまあ、と笑う。

「一瞬だって!」
「締めっ!寄りによって締めやねんっ」
帰らして、と蹲る侑士に、忍足はそういうキャラじゃないもんなぁ、と言う。

「ゆーし!俺がいるからさっ」
「ガクト、テノールやん。ソロ、無いやん」
「でも、立ち位置変わって隣じゃん?」

手でも繋いどく?と言った向日。

「なんでやねん」
「安心するかな?って」
「夜、寝られへん子どもちゃうねん」

クラスメイトに慰められている侑士に
 忍足君、あんな感じだっけ?
 なんかかわいい
と、周囲で見守る女生徒が、あ、と声を上げる。
生徒たちを割いてやってきたのは跡部。

「忍足、ソロ、するらしいじゃねぇの」

モーゼの海割り、とその様を表現した侑士。

「情報早いなぁ」
「なにを落ち込んでんのか知らねぇが、朗報をくれてやる」

中止かっ!?と顔を上げた侑士の眼前に、1枚の紙を垂らした。

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