She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第25章 キミノコエ
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パチリ、と丸いレンズの向こうで瞬いた瞳。
「見たん?」
「ごめん、見ちゃった」
謝ること無いやろ、とファストフード店の端の席で、向かい合って座る侑士が、ハンバーガーの包み紙を開く。
「俺も聞かされんと撮られたから、止める暇無かったし」
「やっぱり、岳人君だったんだね」
「音楽ん時間に、急に『歌え』言われて、何のことや思ったらもう投稿されとった」
「一応、公開は24時間で消えるみたいだから」
明日には見れなくなってるよ、と励ましのような言葉をかける。
「でも、思った通り」
ハンバーガーに齧りついていた侑士が、ん?と顔を上げる。
「歌、上手だね」
「...そら、おおきに」
そう言うと、僅かに残ったハンバーガーを喰らい尽くす侑士。
「照れてる?」
「照れてへん」
「耳、赤いよ?」
んぐ、とコーヒーで飲み流す様子に、くすり、と笑う。
「誂わんとって」
「だってかわいいんだもん」
ニコニコとして、ティラミス味のジェラートを掬ったスプーンを差し出す。
「あの曲、タイトル、なんだっけ?」
「『花は咲く』?」
うま、と貰ったジェラートのほろ苦い甘さに驚いている侑士に、そうだ、と頷く。
「ゆう、今度カラオケ付き合って?」
「ええけど、そないに持ち歌無いで?」
「じゃあ、リクエストしたら歌ってくれる?」
歌える歌なら、と言う侑士に再度、ジェラートを差し出す。
「『ラムのラブソング』でお願いします」
「ちょお、待ってや。本気か?」
あれを歌えと?とジェラートを溶かしている顔に笑う。
「あとはねぇ...あ、『学生街の喫茶店』とか」
「ええよ」
「『ラムのラブソング』と『学生街の喫茶店』ね」
「え、待ちや。
『ラムのラブソング』、ほんまに?」
「ほんま」
眉間にシワを寄せて難しい顔をしている侑士に、ふふ、と笑う。
「ほんなら、俺もリクエストしてええ?」
「難しくない曲にしてね?」
ズルいのぉ、と言われてしまった。
「『悲しみがとまらない』」
「♪I can't stop the loneliness〜♪ね」
「あとマコトん『ラムのラブソング』、聞きたいわ」
「ダーリン、それはだめだっちゃ」
ふはっ、と笑った侑士。
「今ん、むっちゃ可愛かった」
もう一回言ってや、と向けられる優しい笑顔から、恥ずかしいから言わない!と目を背けた。
✜
