• テキストサイズ

She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第25章 キミノコエ



「♪真っ白な〜雪道に〜 春風薫る〜」
「ガクト、音、ハズれてんで」
「う、」

最近、ふと急に歌い出す向日に、バイオリンで多少、音楽の耳は鍛えられている侑士は、僅かな音のズレを指摘した。

「♪真っ白な〜雪道に〜、や」
「ははっ、ゆーしの裏声、ウケる!」
向日のテノールの音を出すため、バスの侑士がファルセットで高く歌う声に、ケラケラと笑う。
「なぁ、普通の声で歌って!」
「♪真っ白な〜雪道にー 春風薫る〜」
ひっくい!と可笑しそうに笑う向日が、ん?と携帯を取り出す。

「なぁ、もうちょっと歌って!」

そう言って携帯を構える向日から、録らんでや、と逃げる。

「ちょっと歌うだけでいいからっ
 ほら!せーのっ」
画角に無理やり押し込まれ、それぞれ異なる音階で短いフレーズを歌う。

「なんやってん?」
携帯を操作する向日は、そっか、と侑士を見上げる。
「ゆーし、SNSしないもんな」
これ、と見せられた画面。

「一日一回、ランダムに通知が来て、通知が来たら2分以内に、今何してる、とかどこにいる、とか、写真か動画で投稿すんだ。
 友達申請したユーザーに共有されて、一定時間過ぎると消えるから、その場その時の瞬間を投稿するっていうやつ」
「なんがおもろいんや?」
「いつ通知が来るかのドキドキ感?」
興味無い、と向日の言葉をスルーしようとした侑士。
「ちょお待て。
 さっき撮ったん、投稿したんか?」
「したぜ」

許可も取らんと、と苦言を呈する。

「24時間経過したら投稿は自動的に消えるんだ。
 大丈夫だって」
「ったく、しゃあないのぉ。
 次はしなや」
「ゆーしもすれば?」
「興味無い」
ふーん、と、向日はそれ以上誘うことはなかった。

「なあ、ゆーし」
ちょっと見て、と、腕を引かれる。
「泉深女短じゃね?」

え?と恋人が通う学校名に反応する。
向日が見る画面に注視する。
廊下の脇で撮影したであろう動画の背景に映り込んだポスターに、泉深、の文字を見つけた。

「うわっ!」
ガシ!と突然手首を掴まれた向日が声を上げる。

なんだよ、と掴んだ侑士を見上げる向日。

「ゆーし?」
「マコトや」

え?と画面を見る。
そこには、大学生であろう女性が、SNSで流行りの短いダンスを踊っている。

「どこ?」

目を凝らす向日の携帯の端を、ん、と侑士が爪先で指差した。

 ✜
/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp