She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第24章 家訓:人の為在れ
- 姉ちゃんの方が浮かれポンチやん-
呆れたような電話越しの侑士の声。
「反対されるよりは良いけどね」
そらそやけど、と腑に落ちない声に、ねえ、と真珠が聞く。
「ゆうは、どんな名前が良いの?」
特に無いで、と返ってきた声に、ん?と違和感。
「それで恵里奈が納得するとは思えない」
-よぉわかっとるのぉ-
かなわんね、と低い笑い声。
-みつきとかけいとか、思いついたん、適当に答えただけや。
あー、男やったら『蓬莱-ほうらい-』とかもええね-
「月に蓬莱...かぐや姫だね。
『みつき』『けい』には、どんな字、当てる?」
-女ん子やったら『美』しい『月』。
男やったら、充実の『充』と樹木の『樹』。
『けい』は『桂』。
『みつき』の月と合わせると『月桂樹』なるから-
「月桂樹...ほんとだ!」
美月、桂、樹、と並ぶと月桂樹だ、と気付く。
「きょうだいで一つの名前になるって良いね」
繋がりがある、と言う真珠に、なあ、と聞く。
-マコトは、なんて答えてん?-
名前、と聞かれて、えっとね、と思い出す。
「女の子なら、さくらちゃん、ゆりちゃん。
男の子が浮かばなくて、ちょっと悩んだ」
-ええ案浮かばんかったん?-
「一つだけ浮かんだのは『あらし』君」
あらしなぁ、と言う侑士。
「山風の嵐に、止め字で、ゆうと同じ『士』とかどうかなって」
空に指で書きながら、どう?と問う。
-止め字、俺とおんなしにするんや-
えっと、と少し口籠る。
-俺との子、って前提で、考えたん?-
「だって、ほら、さ」
語尾が窄まる真珠。
「恵里奈に聞かれたし、なんか、だってほら、さぁ!」
なんの疑問もなく、『侑士との子』というのを前提に考えていた自分に気づき、うぅ~、と1人、部屋で縮こまる。
-ははっ、かわええねぇ、マコトは-
けどな、と続けた侑士。
-俺も、マコトん事、言えへん-
どういう事?と聞く。
-なんがええやろ?て考えた時、一番に思たんは『男女どっちにも使える名前』やってん。
『みつき』も『けい』も、どっちにもつけられるやろ。
字ぃは、ほんまにたまたま読んどった本から引っ張ってきただけやってんけど、-
やから同し、と言った侑士。
-みんな使お思うたら、6人産まなやんね-
「せめて二人か三人にしません?」
6人かぁ、と真珠は慄いた。
