She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第24章 家訓:人の為在れ
「ゆうちゃん、子どもにつけたい名前、ある?」
「藪から棒すぎひん?」
わざわざ部屋に来て聞く話題か?と、寝る前の読書をしていた所に突然やってきて、ベッドに腰掛けてクッションを抱えているパジャマ姿の姉を見る。
「なん、妊娠でもしたん?」
「しとらんわっ」
顔色もいいし、ふっくらしたようにも見えない姉に、突然言われてもなぁ、と本にしおりを挟む。
「俺ひとりが決めること、ちゃうやろ」
産むん俺ちゃうし、と、椅子にもたれて脚を組む。
「そんなマジレスせんでよ。
例えばの話っ」
「例えば言われたかて、急すぎるやろ」
せやねぇ、と腕を組む。
「男?女ん子?」
「ともに」
めんど、と言いつつ考えてくれる弟は、優しいやつやなぁ、と抱えたクッションに顎を乗せる恵里奈。
「『みつき』」
侑士の声に、ん?と顔を上げる。
「女ん子やったら、美しい月で『美月』」
男やったらなんがええかな、と、天井を見上げた侑士。
「男やったら、『充樹-みつき-』。
あとは『樹-いつき-』とか『けい』とか。
『カツラ』の『桂』な」
空に指で書く侑士に、ふーん、と答える。
「『月桂樹』だね」
名前の由来らしいものに気付いた恵里奈。
「勝利の木やからね。
それに、月桂樹いうたらローリエんことや。
鑑賞樹やし、葉は料理に使えて結構万能な樹やから、そういう汎用性に肖ってもええんちゃうかな、と」
女の子だったら花の名前、と言っていた真珠の言葉を思い出す。
「三人産まな揃わへんなぁ」
あとは順番か、と、考え込む恵里奈。
「子どもでも産むん?」
「やから、ちゃうて」
なしてそないなこと、と聞きかけた時、ベッドサイドで充電していた携帯が鳴った。
-真珠-の表示に、姉を見る。
「出てってくれへん?」
「マコなら、おってもええやろ」
「ええ訳あるかっ」
出ちゃえ、と画面に伸びる恵里奈の手から携帯を離す。
「出ていかへんなら俺が出る」
「よっしゃ!
まずはベッドの下!
それから鍵付きの引き出しやっ」
「ホンマに出てってくれ!」
なんもないわ!と姉を追い出し、扉を閉める前に念押しした。
「立ち聞き、しなや」
「ほな、座って聞く!」
「自分ん部屋、帰れっ」
バタン!と閉めた扉から離れて電話に出た。