She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第23章 いつものデート
お昼を済ませると、このあたりでは一番大きな書店に立ち寄った。
「映像化された小説って、まず見て、次は原作片手に、このシーンはこの表現を見せてるのか、って追いながら見ちゃうんだけどわかる?」
「わからんでもないなぁ。
こないなセリフ、あったか?て読み返して、ああ、尺稼ぐためか、て、納得でけへん納得する時はある」
そうそう、と最近映像化された書籍の棚の前で真珠は笑った。
「いろんな設定とか弄り回してもうて、原作やのうて『発想を得た別モン』になっとる時のあの、悲しいような納得いかへん感情、あるな」
「ある!」
わかるっ!と頷く。
「小説のはそれ、映画のはそれ、って別物として考えて納得するようにしてる」
「たいがい、原作超えてこんしな」
「侑士さん、それは言わないお約束です」
元も子もなくなる、と真珠は棚沿いに歩き出す。
「ゆう?」
立ち止まったままの侑士に振り返る。
どうしたの?と、傍まで戻る。
「なんもないで」
にこ、と笑った顔に、嘘だ、と手を伸ばす。
「ゆうは、何かごまかそうとする時、こっちの頬が少し、引き攣る」
嘘やん、と自分で頬に触れる侑士。
「信じるか信じないかはあなた次第」
「なんの都市伝説やねん」
手を繋ぐ侑士に、なんだったの?と問う。
「言わなあかん?」
「隠し事されると、さみしい」
身長差で上目遣いになる真珠に、ズルイな、と苦笑い。
「マコトが、『侑士さん』言うたんが、ちょっとドキッとしただけや」
目線を外す侑士に、それだけ?と聞き返す。
「うちのオカン、オトンのこと『瑛士さん』呼ぶねん」
「うん」
「ほんで、基本、オトンに敬語やねん」
やから、と言って、くしゃ、と髪を搔いた侑士に、一歩、近づく。
「夫婦みたいだな、って?」
誂いが垣間見える真珠の瞳に、ふい、と顔を背ける。
「侑士さん、かわいいですね」
「今んはわざとやろ」
さすがにバレるか、と小さな舌を出した真珠。
「学校だと、みんな『忍足』?」
ガクト君は「ゆーし」だったね、と言う。
「中等部ん時の女テニの先輩に『おっしー』呼んでくる人はおった」
「『おっしー』?」
「そん人、跡部んこと『べ様』、樺地は『むーちゃん』、ガクトんことは『ガッちゃん』呼ぶねん」
みんな、ゆるキャラみたいな渾名だね、と真珠は笑った。
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