She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第23章 いつものデート
市立図書館の自習室。
衝立で仕切られている横並びの座席で、侑士は読んでいた本から顔を上げた。
隣には、持ち込んだパソコンとにらめっこしている真珠。
時間を見ると、図書館に着いてから2時間が経過していた。
そろそろお昼だ、と隣の席の角を指先で叩く。
顔を上げた真珠の机からボールペンを1本、拝借すると、先ほど返却した本の貸出票の裏に書き込む。
-昼、どうする?-
覗き込んでそれを見た真珠は、ペンケースから違うペンを取り出した。
-お腹すいたね-
-下のカフェでも行く?-
行政から業務委託を受けて運営されているこの図書館は、一階のロビーにカフェが入っている。
-あと少しやっても良い?-
お願いします、と手を合わせる真珠に頷き、手元の本に視線を下げた。
✜
視界の端で振られている手に、手元の本を閉じた。
「お待たせしました」
囁く様な真珠の声に、ええよ、と貸し出し手続き済みの本を閉じる。
パソコンと文具をしまい、小さく伸びをする真珠。
自習室を出ると、ふぃーっ、と息を漏らした。
「とりあえず形にはしたぞぉ」
締め切り間に合いそう、とホッとした表情の真珠の頭を撫でる。
「ご苦労さん」
「ごめんね。付き合わせちゃって」
「好きでついてきとるんやから、ええんよ」
むしろ邪魔してへん?と侑士の眉尻が下がる。
「ううん。
監視の目があれば、サボらないし、『早く終わらせて構ってもらおう!』って気合入る」
「そうか」
まだそう混み合っていないカフェに入り、奥の2人掛けの席にかける。
「レポートて、なんのや?」
「今回のは『書評』。
課題本を読んで書くの」
ちょって苦手で、と真珠は椅子の背もたれに身を預けた。
「私の場合、気をつけないと、『読書感想文』になっちゃうから、まず読んで、整理して。書いては、課題本読み返してってするから進みが悪いんだ」
なるほどな、と頷く。
「課題本は?」
渡された本をパラ、と捲る。
「ゆうも書いてみる?」
「ええよ」
年代いつ頃や、と奥付を確認する侑士。
「待って!
なんとなくだけど、私より完成度が高いものが書かれそうだからやめてっ」
落ち込んじゃう、と言う真珠に、そんな事無いやろ、と侑士は笑った。
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