She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第22章 未来想像図
切り分けたベーグルにきんぴらを挟んで頬張る真珠。
「おいひぃ」
幸せ、と本当に幸せそうな顔に、好きなだけ食い、とカプチーノを飲む。
「ゆうが料理するようになったのって、何かきっかけがあったの?」
ヨーグルトください、と手を差し出す真珠。
「これと言ってあったわけちゃうけど...
小こい頃から、キッチンおるの好きやってん」
「なんで?」
「つまみ食いできるやん」
かわいい、と笑われた。
「『なんか無い?』て覗くから、オカンがこれしてみ、あれしてみ、て手伝わせてくれとったんがはじめやろか?
それから、暇なると『なんか作ろかな』思もて、自分でするようなったね」
「手先器用だから、向いてたんだろうね」
「別に、器用ちゃうよ」
「テニスできてお魚捌けるのは十分器用です」
「マコトは、料理嫌いか?」
「嫌いじゃないけど得意でもないかな。
必要に迫られれば作るけど、趣味にできるほどじゃないって感じ」
そうか、と真珠のベーグルに、ヨーグルトとブルーベリージャムを乗せてやる。
「ほな、料理は俺がしたるよ」
いただきまーす、と食べた真珠。
「せやから、真珠は他ん家事、頑張りや」
きょとん、と見上げる侑士が向けた目線の先を追う。
そこには、やっと一人で立てる頃の子どもを連れた男性。
「育児は、二人でしたらええよ」
よちよちと歩く先にしゃがみ込み、手を差し出して笑っている。
上手〜!とたどり着いた手に高く抱き上げられた子は、キャッキャッと笑っており、見上げる侑士の横顔も笑った。
「どないな仕事するかはよう決めとらんけど、できるだけ家におれる仕事やとええなぁ、思うとる」
「そ、うだ、ね」
「偶には、子ども預けて、二人でデートしよか」
えっと、と俯く真珠の髪を耳にかける。
「俺の勝手な未来予想図やけどな」
「...ゆうは、たまにすごくズルイこと言う」
「そうか?」
照れ隠しに齧りついたベーグルからつけすぎたジャムが溢れて慌てる真珠の口元を、じぃとしとき、と拭った。
「ゆうみたいに、多才な子、育てたい」
「マコトみたいな純粋な子がかわええよ」
「そんな純粋じゃない」
「俺に穢されてもうたかぁ」
ははっ、と笑い飛ばした侑士。
お腹いっぱいなったら寝てまいそうやね、とカプチーノを飲む横顔をじっ、と見つめた。
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