She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第22章 未来想像図
土曜日の午前。
忍足家のキッチンのシンク下収納には、基本、食器用洗剤や台所用漂白剤のストックなどが置かれている。
「なして、こないな所に...」
朝食の食器を洗っていた侑士は、軽い食器用洗剤のボトルに補充しようと開けたそこにデンッ!と居座っていた強力粉を恐る恐る確認する。
「よかった。期限内やん」
その袋は、未開封かつ3ヶ月先の期限。
「粉末研磨剤あたりと間違えよったな」
オカンは偶にこういう事があるから、とズシリとした強力粉片手に冷蔵庫を開ける。
卵はある。
牛乳、バターは無い。
冷蔵庫を閉めて考える。
(パン、は作れへんな)
バター無い、と1キロの強力粉とにらめっこ。
(うどん、はめんどいなぁ...)
どうするか、と見た食品棚で黒ゴマがあることに気付く。
(せや)
大きなボウルを取り出して、砂糖、塩を用意する。
再度冷蔵庫を開けると、小さな小箱を取り出す。
それは、ドライイースト。
消費期限内のそれらを作業台に並べ、シャツの袖を捲る。
さて、とイージーパンツのポケットから携帯を取り出し、音楽を再生する。
キッチンに溢れるのは、懐かしく会った女性が薔薇よりも美しく変わっていた、と歌う歌謡曲。
お湯を沸かすと、ボウルに強力粉を出し、砂糖とイーストを加えて混ぜる。
まな板に打ち粉をし、力を込めて捏ねる。
そう言えば、マコトがカラオケに行こうと熱心に誘っとったな、と思い出し、口遊みながら捏ね続ける。
オーブンで生地を発酵させている間、冷蔵庫を漁る。
ヨーグルト、ブルーベリージャム、いちごジャム。
卵2つ、ごぼう1/3本、紫玉ねぎ、ソーセージ。
「甘いんとしょっぱいん、作れそうやな」
まずは、とヨーグルトを水切りする。
ごぼうを洗ってささがきにし、水にさらす。
玉ねぎを薄くスライスし、辛味抜きに別のボウルで水にさらす。
ジャム、卵、ソーセージと確認し、休憩、と念の為に携帯のアラームをセットして、リビングで学校の図書館で借りた本を読む。
ピッピッピッ、と鳴ったアラームを止め、キッチンへ。
水にさらしておいた野菜の水気を切り、ごぼうはざるにあげる。
フライパンに多めの油を入れ、とごぼうを投入すると、パチパチと音が鳴る。
嵩が減った頃、醤油、みりん、砂糖をくわえ、ごまを足して慣れた手つきでフライパンを煽った。
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