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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第21章 たぶん、友達


「変な話につき合わせてごめんね」
なんのことや?と靴紐を結ぶ侑士。
「台所がどうとか」
ああ、と玄関の上がりに座った真珠と向き合う。

「別に気にしてへんよ?
 真珠のオトンがそういう環境で育った、言うことがわかったっちゅうだけや」
男が台所に立つなんて、と言われたとは思ってへんよ、と笑う。

「昔気質って言えば聞こえはいいけど、感覚がアップデートできてない人だから」
「そんなん、うちもやん。
 じいちゃんの話、したやろ?
 下手したら虐待やで」
そう言って侑士は空を見上げ、どやされるやか?と少し笑った。

「帰り、一人で平気?
 タクシー呼ぶよ?」
ええよ、と立ち上がると、上がり框に立つ真珠と目線が並ぶ。

「明日、お父さんと青凪を駅まで送るから、バス乗らない」
「なんや、彼氏より他ん男取るんかい」
違う!と返した真珠の頭に、冗談や、と手を乗せる。
「ちゃんと見送ったり」
ほなね、と髪と頬を撫でる腕を掴み、手に頬擦りをする真珠。

マコト、と僅かな声で呼び、いつもより少し近い唇にキスをした。

「気をつけてね」
「ん、おおきに。
 着いたら、メッセージ飛ばしとくさかい」
わかった、と手を振る真珠に振り返す。


バスと電車、どちらが早く帰れるだろうか、と携帯で検索しながら歩いていると、侑士!と背後から少し甲高い声で呼ばれて振り返る。

暗がりに目を凝らすと、街灯の下に青凪の姿があった。

「門限ある?」
そう言って侑士に歩み寄る青凪。

「別に、何時て決められとるわけちゃうけど」
「家、遠い?」
急がないと、というほどの距離でもないが、すぐそこ、という距離でもない。
「ちぃと、付き合うてよ」

そう言った青凪は手ぶらだった。

「いやや」
「なっ、そこは『ええよ』言うてやっ」
「めんどい」
「おまっ!
 ほんっまにやな奴やなぁ!」
付き合うてよ、と着いてくる青凪に、溜息混じりに、どこでやんねん、と聞く。

「っおい!」
こっちや、と引かれた腕。
「男と腕組む趣味、無いんやけど?」
「捕まえとかんと、自分、逃げそうやから」

走れば追いつけないだろうか、と考えた事を見透かされた気がした。
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