She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第21章 たぶん、友達
✜
「侑士君、飲めるか?」
居間に通され、食卓と思われる低い卓に正座で座る侑士は、いえ、と苦笑いでぐい呑を差し出す真珠の父に返した。
「まだ高校生です」
「こりゃ、失礼」
未成年やったか、と向かいで胡座をかいて座る。
「佑里子はーん!」
キッチンから、はーい?と返ってきた声が、(真珠とそっくりや)と侑士は思った。
「侑士くんに、お茶かジュースか出したって」
「はいはーい」
あの、と侑士は振り返る。
「すんません。
突然お邪魔したんやし、なんも構わんとってください」
「えー?構いたーい」
間髪入れない佑里子の返事に、はい?と返す侑士。
「真珠は侑士君の事、なんて呼ぶの?」
突然の質問に、えっと、と考える。
「『ゆう』、呼ばれますね」
「わかった!」
そう言って続ける。
「ねえ、ゆう?
麦茶、緑茶、ほうじ茶、コーン茶、紅茶(ダージリン)、コーヒー(インスタント)、サイダー(甘いの、甘くないの)、ノンアルビール、ノンアル酎ハイ、梅シロップの炭酸割り。
あっあと甘酒。どれがいい〜?」
早口だった上に、後半は飲めない、知らないものばかりで、少し黙った後、麦茶で、と返した侑士に、わかった!と笑う佑里子。
「セナちゃんは〜?」
「梅シロップがええ。ちょい、濃いの」
待っててねぇ、と鼻歌交じりの佑里子に(めっちゃご機嫌やんな)と侑士は内心、少し安堵した。
あ、と声を上げた真珠の父。
「なんも挨拶もせんと」
居住まいを正され、侑士も背筋が伸びる。
「真珠の父で、青凪の叔父の龍壱です」
よろしゅう、と軽く下げられた頭に、こちらこそ、と少し深く返す。
龍壱の目線が、侑士と青凪を行き来する。
「大人と子どもみたいやな」
「おっちゃん、酒、ぶっかけたろか?」
「じょーだんや、冗談」
本気にしなや、と睨む青凪に破顔した龍壱。
「侑士君、出身、大阪か?」
「いや、父の転勤で関西におった時期が長くて」
そうか、と龍壱が抜いた一升瓶の栓に、手を差し出す侑士。
「親父さん、なにしてん?」
「医者です。今は、ドイツに」
ぐい呑みの半量ほどで、ええよ、と言われて瓶を置く。
「関西の訛、久しゅう聞いてへんから、なんや、懐かしわ」
もらうな、と龍壱は嬉しそうに、美味しそうに酒を飲んだ。