She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第20章 新しい出会い
「上手やったで」
十分や、と言った侑士。
首の後ろに通したラケットを両手で支える青凪が言う。
「テニスしたらええんに」
「2人の試合見たあとにやろうと思えないって」
「そこまで目指さんでええやん?
ミニテニス式やったら一緒にできるし」
「『ミニテニス』?」
「バドミントンのコートで、ビニールボールでやる室内テニスや。
来ぃ!」
青凪に手を引かれ、コートに立つ。
「ラケットの握り方は4つ。
コンチネンタル、イースタン、セミウエスタン、ウエスタン。
親指と人差指の間を、グリップのどの位置に置くかで変わるんや」
面の角度が変わるやろ?と青凪が指すラケットに、確かに、と頷く。
「マコト」
向こうのコートのベースラインに侑士が立っていた。
「返してみ」
「えっ無理だよっ」
リターンなんかできない!と言う真珠の後ろから、青凪がラケットを持つ手を支えた。
「おいっ!」
下打ちで構えていた侑士が声を上げた。
「サポートするから」
「は、はいっ」
はよ打ってこーい、と手を振る青凪に、一瞬、(当てたろかな)とボールの打点確認をした侑士は、真珠に当たる可能性もゼロではないので、仕方なく緩やかな球を打った。
「1.2の3で行くで」
「はいっ」
向かってくるボールをぐっと目で捉える。
「1.2の」
青凪に手を引かれる。
「3!」
確かに手に感じる反動。
「うまい」
高く山なりに返ったボールに、サムズアップで、バッチリ!と笑う青凪。
返されたボールを、バウンドする前にラケットですくい取るようにして止めた侑士。
「返せたやん」
うん!と頷く。
軽く構えて、打つ瞬間にギュッと強く握ると球に速度がつく、と指南してやる青凪。
「マコト、こっち持ってみぃ」
侑士と交換したラケットの軽さに驚く。
「自分、結構重いん使てるね」
「重い球飛ばされたら、腕力で押し負けるんや」
苦々しい顔の青凪に、なるほど、と青凪のラケットをスイングしてみる侑士。
「音が、違う」
同じスイングなのに、と真珠は驚く。
青凪のラケットを手にサービスラインに立つ侑士。
「アイツの打ち方やったら、絶対フォールトなるで」
「『フォールト』?」
「サーブをミスすることや」
青凪のラケットで侑士が打ったサーブは的確に入った。
「コントロールうますぎ」
青凪の苦々しい声と真珠の関心した声が混ざった。
