She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第20章 新しい出会い
サーティフィフティーン、とコールした真珠に、青凪が言った。
「俺が1点取る前に、あいつが連続2点取ったらゲームセットやで」
わかった、とゲームを見守る。
青凪が打ったボールを侑士は高い位置から返した。
決め球のつもりだったが、青凪はすんでのところで追いつく。
エリアの後方に下がった侑士を確認すると、ラケットを強く握って、小さく振った青凪。
「っしゃ」
間に合わへん、とネット際に落ちる球に声を上げたが、バウンドしたボールはネットに触れない際の際で返された。
侑士のドロップショットは、トン、とコートについて転がりも跳ねもしなかった。
「まじか」
追いつくんや、と唇を噛む青凪に、ラケットを肩にトン、と当てて言う侑士。
「脚の長さの差やな」
「っ腹立つやっちゃなぁっ!」
「マッチポイントやで」
「わかっとるわいっ」
次っ!と、すでに構える青凪に、(意外と切り替え早いな、)と少し感心する真珠。
向日の言っていた、プレースタイルの違い、というのがよくわかる、と試合を見ていた。
「すげぇな」
ふと聞こえた声に振り返ると、ラケットを持った二人の男性が試合を見ていた。
「眼鏡の方、相当『やる』タイプだな」
技術が高い、と感心したような声を出す。
「チビの方も、結構食いついてくな。
今のなんか、俺、見送る」
「テクはまあまあだけど、球早いし根性ある」
仕掛け時の見極めが早い方が勝つかな、と言う。
(仕掛け時...)
わかるかな、と二人のゲームを見ていると、え、と侑士に目が止まる。
なんてこと無い、特にハイスピードでもない球だった。
テン、テン、テン、と青凪の後方に転がっていく球。
「え?」
「なんだ?」
(今、ゆうが...)
そこにいたよね...?とコートに立つ姿に目を凝らす。
(まるで、消えた、みたいに)
存在が一瞬消えたように感じ、戸惑う。
ちぇ、とラケットを降ろす青凪に、ゲームセットだ、と気付く。
「ゲームセット!ウォン バイ 忍足!
えっと...」
カウントが分からなくなって戸惑っている真珠。
「なんだ、あいつ」
「まともにカウントできてないじゃん」
外部からの声にドキリとする。
侑士がそちらに視線を向けると、野次馬をしていた男たちはヤベ、と言ってコソコソと離れる。
青凪と握手を交わした侑士が伸ばす手に掴まり、審判台を降りた。
