She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第19章 Jealous Gaze
(男、やけど)
ガクトより小こい、と真珠が眺めているコートでボールを打つ少年を、少し遠くから睨む。
手の中で弄んでいる携帯。
電話をかけるなり、メッセージを飛ばすなり、それができない自分に、ヘタレめ、と自嘲する。
つけてきたはみたものの、どうしようか、と立ち竦む。
見たところ、正直、やましいことがあるようには見えない。
今のところ、ただ、二人でテニスコートに来ただけ。
けれど、それは自分といる時の真珠とも重なって、少し、腹が立つ。
更衣室の建物の陰に入り、どうしようか、と座り込む。
ただの友人だという確信を得たい自分と、わざわざ確かめるために乗り込むのも気恥ずかしい自分が葛藤する。
よし!と立ち上がり、ひとつ、呼吸をする。
(しれっと知らへんかった顔で行ってみるか)
バス停で見かけたんもたまたまやったんやし、と偶然を装うようにトイレ側からコートに向かおうとした侑士は、その陰で人に当たりかける。
「すんません」
じろ、とこちらを見た20代前後の男は、あまり治安が良いようには見えない。
「気をつけろ、クソガキ」
侑士の制服を見て言い捨てると、嫌な視線で睨めつけ、どけ、と肩を押された。
関わらないのがベスト、と見送ったが、彼を真似るように睨みつけながら通り過ぎた三人が向かう先に、顔を顰める。
他に空きのコートはあるが、4人は一直線に真珠がいるコートの隣へ向かっている。
さっきまでどう声を掛けようか考えていた思考は頭の外に追いやる。
制服の自身を見下ろし(なんも起きんなよ)と願かけ、更衣室で偶然持っていたトレーニング用の自前のジャージに着替える。
コートは4面ある。
真珠たちがいるコートは一番奥。
更衣室からコートへの階段を駆け下りるが、ボールを打ち合う音は聞こえない。
嫌な予感、とラケットバッグを背負い直して、コートを囲うフェンスに目を凝らす。
(やっぱりな)
そういう勘は当たるんや、と駆け寄ろうとしたが、ラケットバッグに刺繍された学校名と氏名に舌打ちをして、辺りを見回す。
(あっこからやったら)
コートの脇の木までの距離をざっくり目視で測り、いける、とコートの脇に籠いっぱいに置かれていた、廃棄用と思われるボールを拝借して走り出す。
樹の下に入ると、ラケット1本を口に咥えて、片手にボール籠を持って登った。
✜
