She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第19章 Jealous Gaze
テニスコートには空きがあって、申請書一枚で一面を使わせてもらえた。
貸出用のボールをひと籠借り、フェンスを開ける。
「セナ、高校どこだっけ?」
「東山や。今年は絶対、全国行くねん」
「そっか。」
おう!と笑う。
「高校テニスの全国大会って東京?」
「せや。そのために、まずは近体やんな」
「『キンタイ』?」
近畿高体連関連大会、と答え、青凪は上着を脱いだ。
その下は、すでにテニスウェア。
「クレーちゃうんや」
「『クレー』?」
貸して、と手を差し出した青凪に、レンタルボールの籠を渡す。
「テニスコートってな、グラス、クレー、ハード、オムニ、カーペットてあるんよ」
「へえ」
「ウチのテニコ、クレー言う、土のコートやねん。
大会とかに使うとこは、グラスかオムニ...芝生のコートが多いねんで」
つまりここ、と靴で地面を叩く。
「コートによって、靴も変わるし、ボールの跳ね方も変わるねん」
ちぃっと慣れへんけど、と、青凪はラケットでボールを地面に打ち付けた。
手にしたボールを額に当て、数秒、時間を空けてサーブの構えを取る。
枠外の真珠は、その姿に侑士を重ねる。
青凪が打ったサーブは、ほぼ直線の軌道で落ち、ネットスレスレを越えて、相手コートのセンターラインに落ちた。
(ゆうと、全然違う)
相手のない打ち込みだが、侑士と青凪のサーブが全く違うものだというのは、未経験で知識も浅い真珠でもすぐに理解できた。
(ゆうだったら、どう返すかな)
青凪が飛ばす球の行方の先に侑士を思い浮かべ、その様子を見守っていた。
借りた球をすべて打ち終わると、青凪はコートの片面に移動し、そこに散らばったボールをラケットで掬い上げていった。
(テニスする人は、みんなアレ、できるのかな?)
地面に転がった球をヒョイのラケットの枠で掬い上げ、ラケットを持たない方の手でキャッチしていく仕草は、侑士もやっていた。
再びサーブ練習を始めた青凪。
(セナのテニスは、本当に、楽しそうにする)
侑士が楽しくなさそう、という訳ではない。
淡々着々とこなしていく侑士のテニスと、感情が垣間見える青凪のテニスは対照的だ、と真珠は青凪の練習を見守った。
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