She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第3章 ファーストチャンス
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帰宅後、風呂のあと私室に戻ると、充電器に挿していた携帯を手に取る。
「あ、」
数分前に、メッセージが届いていた。
-真珠です-
生乾きの髪をかき上げ、ベッドに腰掛けてメッセージを開く。
-突然連絡してごめんなさい。
恵里奈から連絡先を聞きました。
今日は一緒に映画を見てくれてありがとう
楽しかったです。-
ありがとう、と告げる小鳥のイラストが添えられていた。
「まじめやなぁ」
姉ちゃん謝ったんやろうか、と返事を考える。
-侑士です。
連絡、ありがとう-
そこまで打って、うーん、と考える。
「触れんべきやろうなぁ」
姉の失礼を詫びたほうがいいか、悩んでいると、真珠からメッセージが届く。
-今日の恵里奈のこと、本人には怒らないでください。
私と恵里奈は仲直りしました-
先越された、と嘆息し、よし、と打ち込む。
-謝るのはこっちです。
俺は、気にしてへんので。
たまにああやってめんどいとこあるんは昔からやから、許したってください-
これじゃどっちが年上かわからない、と姉のフォローをしつつ、読みかけの本を開きかけたら、新たにメッセージ。
-私も、冗談って流せなくてごめんね-
ごめんなさい、と謝る猫の絵文字。
冗談、としばらく画面を見つめていると新着。
-おやすみなさい。
明日、侑士くんにとっていい日でありますように-
おやすみ、と丸くなって寝る猫のイラスト。
画面に収まってしまう短いやりとり。
「いい日でありますように、か」
えらい気遣いの言葉やな、と小さく笑う。
-おやすみ。
おおきに-
あまり数のないイラストから、デフォルメされた犬が眠っている1枚を贈る。
「子どもっぽかったやろうか」
既読のみで返事のない画面を見つめる。
「ゆうちゃん、まだ起きてる?」
ノックと先ほど帰ってきた母の声。
「ごめん、渡し忘れてた」
渡されたのは自分宛ての封書。
差出人の企業名に、ああ、と受け取る。
「あまり夜更かししちゃだめよ」
「もう寝るよて」
おやすみ、と言う母に、おやすみやで、と扉を閉める。
封書の中には、雑誌の企画抽選に応募していた映画のチケット。
「月末、か」
眺めるチケットは二枚。
読みかけの本に挟んで鞄にしまうと、パチリ、と部屋の電気を消した。
✜