She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第19章 Jealous Gaze
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始業までの僅かな空き時間。
読んでいた小説の主人公が、あの日の自分と真珠のように恋人と夜を過ごす描写に、溜息をついて本を閉じた。
(現実、そううまくいかへんて)
つい、悲観的に捉えてしまう。
親不在の部屋に恋人と二人(別室に姉一人)。
男ならば、多少、いやだいぶ期待はしてしまっていた訳で。
一日目は真珠が寝落ちてしまった故だったが、今日も泊まるか?と二日目に聞いた時、「一緒にいたい」と恥ずかしそうに答えた真珠。
なにを察したか、昼前に姉は出掛けた。
二人で家でまったりと過ごし、レコード店に行って、真珠が食べたいと言ったパスタを2人で作り、借りていた本があったので図書館に出向き、しばらく2人で本を読み、夕方に帰りすがら食事を済ませた。
昨夜は、「女の子の話がある」と姉に真珠を奪われ、2日続けて2人で寝たベッドに1人寝た。
今朝、母がいないので早めに起きて朝食の支度をしようとキッチンに行ったら、すでに真珠だけが起きていて「勝手に借りたけど、よかった?」と支度してくれていた朝食を食べ、ゆっくりしてていい、と言ったのに、一緒にいたい、と朝練に間に合うバスに一緒に乗って、いつも通りに氷帝学園前のバス停で、バスの窓越しに投げキッスをくれた。
(あの仕草、好きやんなぁ)
ちょっと誂うような目でくれる投げキッスに、今朝は小さく同じ仕草を返したら、驚いた顔をした後、ふにゃりと笑った真珠。
(仕掛けはしてくるんよなぁ)
だけど、と肘をついた手で口元を抑え、瞼を閉じる。
(恋人同士が24時間以上一緒におってコトが起きひんってある?)
ソレが無かったとしても、真珠との時間は大好きだし、それ以外は本当に充実していた。
映画を見て、本を読んで、音楽を聴いて。
一緒に料理をしたのは、まるで二人で暮らしているみたいでテンション上がったし、目を開ければ真珠がいて、視界にいなくても存在感がすぐそこに感じられるのは特別だった。
(自分が思うより、強欲やんなぁ)
真珠のすべてが欲しくなる。
心だって、体だって。
時間も、思考も、未来も。
(ホンマに気ぃつけんと、いつか、傷つけてぶっ壊すで)
愛らしかった寝顔。
見ているとこちらも笑ってしまう笑顔。
話す声。笑い声。微かに口遊む歌声。
瞼の裏に浮かぶ真珠の姿に、パリ、とひび割れが入り、目を開けた。
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