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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第19章 Jealous Gaze


シュッ!と音を立てたラケットが飛ばした球が、想定と少し、異なる軌道を描いた。

(ん?)

もう一度、とサーブを打つ。

多少のズレに、ラケットの具合を見てみる。

「ゆーし、調子悪い?」
一緒に練習をしていた向日に言われ、うん、と返す。

「なんやろ、ちょっとグリップ巻き直すわ」

見たところ、まだそう消耗しているようには感じなかったが、違和感がある。
コートを離れ、何の違和感だろうか、と握り直して様子を見てみるが、目に見える限りではその原因が見つからない。
ガットとフレームも念の為確認してみる。
歪みやよれは見つからない。

(なぁんや、気持ち悪いな、)

グリップテープを巻き直して握る。

(やっぱ、ちゃうな)

目に見えない歪みがあるのかも、と地面に置いてぐらつきが無いか見る。
大きな損傷やゆがみは見つけられなかったが、替え時なのかもしれない、とロッカーのバッグから別のラケットに替える。

(アレ、気に入ってたんやけどな)

後できちんと見直そう、と練習を再開した。

 ✜

帰路に着きながら、違和感を感じているラケットを手に考える。

(なんやか。
 気になってしゃーないわ)

うーん、とバス停に向かう。

(ラケットに異常はない。
 他んラケットには違和感ない。
 グリップは巻き直した。
 ガッドのハリはいい。
 あとは、なんや?)

思い当たることがないか、と考える。

「氷帝学園前」のバス停でバスを待つ。

(オカン帰ってきたら、買い替えてええか聞いてみよ)

テニスに関するものは月のお小遣いと別で出してくれるので、母が帰ったら聞いてみようとラケットをバッグにしまおうとした時だった。

「まことちゃんっ」

恋人と同じ名前に、反射的に顔を上げる。

(て、マコトとは限らんやろ)

自分に苦笑いしつつ、声の方に顔を向けた。

「あ?」

低く出た声。

逆方向のバス停から発車したバスの向こうに、真珠の姿があった。

その隣に、男。

親しそうに話すと、一緒に歩き出す。

前に会った、父親の会社の同僚ではない。

ラケットバッグを背負う影は男。

変わらない身長の二人が並んで歩いていく姿に、ゆっくりと脚を向けた。

 ✜
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