She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第18章 はじめてのあさ
うーん、と寝返りを打つと、自室の布団の寝床ならば感じるはずのない、僅かなスプリングのたわみを感じ、あれ?と意識が留められる。
目を開けると、目の前には一面の紺色。
なんだ?と手を伸ばして、スリ、と撫でた。
「っぁ、」
頭上から低い僅かな声が聞こえ、顔を上げる。
「ゆっ」
ん、と顰められた顔に、しまった、と口を手で塞ぐ。
ゆっくりと離れていく眉根。
くう、と一つ大きく繰り返された呼吸は、すぅ、と穏やかな寝息に変わる。
(えっ、と)
寝息を立てている侑士を起こさぬように、目線だけで状況を把握しようと周りを見回す。
紺色は彼が着るパジャマの色で、自分は昨日、彼の母を空港で見送った時のままの姿。
(ゆうの、部屋)
本棚とオーディオ、クローゼットと確認し、思い出す。
(リビングで、恵里奈も一緒に映画見て...)
もしかして途中で寝てしまったのか?と枕元を見ると自身の携帯。
ゆっくりと布団から腕を引き抜き、時間を確認する。
04:46
妙な時間に起きてしまった、と携帯を置いて、腕を布団に潜り込ませると、う...ん、と僅かな寝言を漏らした侑士の腕に抱きすくめられた。
起こしてしまったか、と見上げてみるが、目は閉じられていて穏やかな寝息が続いている。
(睫毛、なっがぁ)
ビューラーしやすそう、と長い睫毛に縁取られた瞼を見つめる。
すっかり目が冴えてしまい、とりあえず侑士の寝顔を眺めた。
(こうやって見ると、ちょっと幼いなぁ)
幼い頃の写真を見たせいかも?と鼻先にかかる長い前髪をそっと払うと、薄く開いた瞳。
「ごめん。起こしちゃった?」
僅かな声で謝ると、再び閉じた瞼。
寝ちゃったかな?と見つめていると、布団の中で腰辺りに脚が絡みつき、抱き寄せられる。
抱きくるめられる、とはまさにこの状況、と大きな体にすっぽり包まれる。
(やっぱり、男の子だなぁ)
すり、と額を寄せた胸板。
とん、とん、と背中に回った手が優しく叩く。
なに?と見上げた目は合わない。
(寝ぼけてる?)
とん、とん、と繰り返される振動に、再びうとうとしだした真珠の瞼もパタリと閉じてしまった。
2人、再び夢の中に入り、目が覚めたのは真珠のアラームが鳴った6時過ぎだった。
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