She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第17章 いっしょのよる
「おまちどぉさま」
よぉ混ぜや、とテーブルに置かれた2つのロンググラス。
「おおきに」
「2つで1,000円」
恵里奈に向かって差し出された侑士の手。
「出世払いにしとって」
そう言って恵里奈はその手をパチン、と叩いた。
忘れなやぁ、と侑士は自分もグラスを手に、真珠が座るソファの背もたれを軽々跨いでその隣に座った。
「2つで1,000円、安くない?」
頂きます、とストローで紅茶を飲んだ真珠。
「んー、なら、マコトの分はタダにしとく」
「出た!彼女贔屓だっ!」
「自分で出世払い言うたんやろっ
約束は守ってもらうでぇ」
「なら500円!」
「1,000円言うたら自分が『出世払い』言うたんやん。
1,000円、払おうてや」
「ボッタクリだぁ!アコギだぁ!」
はいはい、と貰う気はない侑士は、どぉや?と真珠に聞く。
「甘さ、足るか?」
「めっちゃちょうどいい」
「ん、ならよかった」
そう言って自分も飲むと、よぉできた、と納得する。
「ゆうは料理人にもなれるかもね」
「むずいもん、作れへんよ」
「お魚捌けて、夕飯作れて、飲み物も作れれば十分では?」
コレだってドリンクスタンドできるよ、とおいしいティーソーダを味わう。
映画、流すよー?という恵里奈。
はーい、という真珠の返事と、ええよ、と答えた侑士。
配給会社のロゴが浮かび、映画が始まった。
✜
ソファに並んで座っていた侑士と真珠。
視界の端でゆらゆらと揺れだした影に、侑士はグラスの紅茶を飲み干した。
映画に集中している恵里奈の背中に声を掛ける。
「寝ちゃったの?」
「寝とるね」
両手で持っているグラスを取り上げ、ぐらついた真珠の頭を抱える。
「そっちの部屋、連れてくで」
「え?なして?
ゆうちゃんの部屋、連れてきぃや」
アホかっ!と小さく返す。
「女ん子、男の部屋に寝かせぇ言うんか?」
「ええやろ、付き合うてるんやから」
「アカンやろ」
「襲いそう?」
どアホ、と返し、しゃあないなぁ、と起こさぬように抱き上げる。
「うおっめっちゃ軽!」
岳人より軽い、と驚く侑士。
「え?がっちゃん、お姫様抱っこしたことあるん?」
「あるで。スクワットのウェイトに」
「なんで?」
「ちょうどええのがなかってん」
だからって同級生をお姫様抱っこする?と恵里奈は怪訝そうにした。
