第1章 幼馴染ってやつ
「え…なんで…何が無理!?」
なんて目を丸くする大ちゃんを置いて
部屋に戻り
ソファーに座って
少し緩くなったビールを飲んでいると
私の後を追って部屋の中に入ってきた大ちゃんは
私の隣に座り私の顔を覗き込むと
「何が無理なのか…ちゃんと教えて…?」
そう言って首をかしげる…
突然私の前からいなくなって
また突然私の目の前に現れた
大好きだったお兄ちゃん
そう…それはその言葉の通り
だった…なんだ。
「あのね大ちゃん…?」
そう私が話し始めると
大ちゃんは
"うんうん"
と小動物のように笑顔で頷く…
その可愛い笑顔から目を背けながら
「大ちゃんはさ
もう私の知ってる大ちゃんじゃないよね?
私の知ってる大ちゃんはね
幼馴染の優しいお兄ちゃん。
でも今の大ちゃんはテレビの中の人で
私とは住む世界が全く違うでしょ?」
そう言ってまた目の前のビールに手を伸ばすと
大ちゃんは私のビールを奪い取り
躊躇いもせず自分の口に運ぶと
「それは私の…」
そう文句を言いかけた私を
睨みながら
「俺は俺のまんまだよ?
まこちゃんの側にいた時と
何も変わってない。
あの頃も今もこれから先もずっとね?」
そう言ってまた懲りもせず
私の頭に手を伸ばす
私はその手を掴み引っ張り上げると
「まこちゃーん笑?」
そう楽しげに私の名を呼ぶ
過去の亡霊の背中を押して
玄関の外に向かい追い払った…