第1章 幼馴染ってやつ
「大ちゃん…?」
そう恐る恐る名前を呼ぶと
抱きしめていた体を離し
「うん…
ごめんね…全然連絡出来なくて
ちゃんとデビューして落ち着くまでは
我慢するべきだと思って
でもやっと会えたね?」
そう言って笑いながら
濡れたままの私の頭をよしよしと撫でる手は
紛れもなく
私の大好きだった大ちゃんの手で
忘れていた記憶が
一気に身体中に駆け巡る
何がなんだか訳がわからず
「でも…なんで大ちゃんがここにいるの?
隣に越して来たって…?」
そう言って私の頭を撫でる
大ちゃんの手を掴むと
大ちゃんは私の手を握りしめて
「ここのことはこないだ実家に帰った時に
まこちゃんのお母さんに聞いた。
辛い時にそばにいてあげられなくてごめん
でもこれからはずっとそばにいるからね?」
そう言いながら大ちゃんが
目深に被っていた帽子を取ると
目の前に綺麗なピンクの髪がさらりと落ちて
アイドルとして遠くに見ていたはずの
大ちゃんの姿が現れる…
その瞬間
懐かしいと感動して涙が出そうになっていた
はずの気持ちは冷め
涙は砂漠で干からびたかのように引いていき
目の前でキラキラした笑顔を
私に向ける大ちゃんに
「待って、マジ、無理だから…」
そう言って
私の手を掴む大ちゃんの手を
勢いよく振り払った…。