第6章 優しい嘘
「ひどい顔してますね…
ちゃんと眠れてますか…?」
そう言って伸ばされた手を避けると
ゆきちゃんは悲しそうな顔をして
「やっぱり…怒ってますよね…?
あの日のこと
ちゃんと謝りたかったんです…」
なんて申し訳なさそうに下を向く…
そんなゆきちゃんから目を逸らし
「俺も中途半端な態度をとったから
お互いあのことはもう忘れよう?」
そう言って背中を向けた瞬間
「それは嫌です…」
なんて言葉と一緒にお腹に手が回され
後ろから抱きしめられる…
「私…佐久間さんが好きです…
私がずっと側にいて
佐久間さんを笑顔にしてあげます…
だから…
私を選んでください…」
この手を選んだら
ほんとにまた笑顔になれる…?
なんて一瞬
考えてみても
答えはすでに決まっていて
俺がそばにいて欲しいのは…
「ごめん…
でも…俺がそばで笑っていたいのは
ゆきちゃんじゃない…」