第6章 優しい嘘
部屋に入り扉に鍵をかけた瞬間
ぼろぼろと涙がこぼれ落ちて
その場に座り込んだ…
扉の外から
「まこと…!」
私の名前を呼び
扉を叩く音がする…
出来ることなら
今すぐ扉を開けて
大ちゃんの胸に飛び込んでしまいたい…
でもそんなこと
出来る訳ないから
声が聞こえないように
ただ耳を塞ぎ息を潜めることだけが
唯一私に出来ることなんだ…
スマホを耳に当て
「別れましたよ?
これでいいんですよね…?」
そう言った私に
「ありがとう笑
あとのことは心配しなくていいよ?
佐久間くんのことは私がちゃんと
慰めてあげるから笑」
なんて電話の向こうから
楽しそうな笑い声がする…
「約束は守ってくださいね…!
大ちゃんを傷付けたら
私が許しませんから…」
「そんな怖いこと言わなくても分かってるよ?
写真は破棄するし二人の関係を
マスコミにもバラしたりしない…
そのかわり…
佐久間くんは私のもの…
それが約束だもんね?」
私は自分がした選択を
後悔しないだろうか…?
彼女の脅迫に負け
大ちゃんを手放したことを
でも今の私には
大ちゃんを守る方法が
これしかない…
大ちゃんの側にいられなくても
大ちゃんが笑ってくれるなら
私はいくらでも嘘つきになる…