第6章 優しい嘘
「嫌だ…」
そう言って私の手に触れる大ちゃんの手が
小さく震えてる…
「大ちゃん…ごめんね…?」
そう言った私の声も震えてる…
それでも
もう決めたんだ
大ちゃんのために
「私には大ちゃんと付き合ってていく
覚悟が出来てなかったんだよ…
この1ヶ月で
それが嫌って言うほど分かちゃった…笑
こんな風に突然連絡が取れなくなったり
急に目の前に現れたり
私にはこんなの耐えられないよ
私は普通がいい
人目を気にせずデートしたり
手を繋いで外を歩いたり
そんな普通がいい
だからもう
これ以上一緒にいられない…
ごめんね…?」
嘘をつくって…
こんな嘘つきな
私のせいで苦しまなくていいよ…?
今は苦しくても
きっとすぐに忘れられるから
ソファーから立ち上がった
私の手を大ちゃんはぎゅっと握りしめて
「行くな…」
そう言ってくれた…
だから
言えない
"大好きだよ"
の代わりに大ちゃんの手を
一度だけぎゅっと握り返して
振り返らずに
大ちゃんの部屋を出た