第1章 幼馴染ってやつ
"俺…来月家を出ていくんだ…。"
そう言われた時は
私の記憶が正しければ
すごくすごく悲しかったような気がする…
バカみたいに泣きながら
"行かないで"
そう言ってすがったような…
気もする…
そんな私に大ちゃんは
"泣かなくても大丈夫だよ?
ちゃんと迎えにくるから
いい子で待っててね?"
なんて
訳のわからないことを言って
いつものように
私の頭をよしよしと撫でていた…
きっとあの言葉は
泣きじゃくる私を慰めるために
言った何の意味もない言葉で
あれから10年が経ち
根暗で人見知りながらも
なんとか独り立ちした私は
大ちゃんがあの日言った言葉も
私の知らぬ間にアイドルになり
私から遠く離れた存在になった
大ちゃんのことも
日々の生きていくことに
ただひたすら必死で
すっかり綺麗に忘れ去っていた