第2章 アイドルと幼馴染の間
朝目が覚めてカーテンを開けると
いつもと変わらない景色が広がっていて
昨日のことが
全て夢だったんじゃないかとさえ思える
顔を洗って身支度を整え
玄関から外に一歩踏み出せば
私の中でカチリと音を立てて
外行きのスイッチが入る
ちらりと隣の家に目を向けると
昨日大ちゃんが言っていた
"隣に引っ越してきた…"の言葉が
頭をよぎる…
でも、でも、でも…
いくら大ちゃんが猪突猛進的な性格だとしても
一応あれでアイドルだし…
そんな無鉄砲なことをするわけがない。
だからきっとあの言葉は
私に扉を開けさせるために
咄嗟についた嘘に違いない!
そんなことを
お隣の扉の前を通り過ぎながら
ぶつぶつと一人喋っていると
急に玄関の扉が勢いよく開き
驚いて壁に張り付いた私の目の前に
現れたのは
寝ぼけた顔とくしゃくしゃの髪で
「いってらっしゃい…また夜に会おうね笑」
そう言って私に向かい手を伸ばし
よしよしと頭を撫でながら
笑顔をふりまく
大ちゃんの姿だった…