• テキストサイズ

【呪術廻戦・甚爾夢】胡蝶の夢【完結】

第6章 甚爾という男


「最近、連絡少ないじゃない」

 紫苑の問いかけに、甚爾は軽く煙を吐き出しながら視線を向けた。

「仕事が忙しくてな」

 適当な答え。

 紫苑が「本当かしら」と疑うのも、計算通りだった。

(そろそろ、また揺さぶる時期か)

 適度に放置し、焦らし、再び戻ってくる。

 それを繰り返すことで、紫苑の中で甚爾は「突然消えるが、また戻ってくる男」になった。

 ——「戻ってくる」という前提ができた時点で、もう勝ちだ。

 紫苑の中で、「いつか本当にいなくなるのでは」という不安が生まれる。

 だから、甚爾の些細な言葉に、紫苑は必要以上に揺れる。

「俺、正直、他の女はもう興味ない」

 紫苑の手が止まる。

(そうそう、その反応)

「……は?」

「お前が一番だって思う」

 冗談のような軽い口調。

 紫苑が疑っているのもわかる。

「また、適当なこと言ってる」

「適当か?」

「適当でしょ」

「そっか」

 それ以上、言葉は足さない。

 大事なのは、「言葉を残す」こと。

 紫苑の中に「でも、あのときああ言っていた」という記憶が残れば、それでいい。
/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp