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【呪術廻戦・甚爾夢】胡蝶の夢【完結】

第5章 短編


静かな夜だった。

紫苑はベッドの上でシーツを引き寄せ、横になったまま甚爾を見つめた。

「ねえ」

「ん?」

「私といると、楽?」

甚爾はヘッドボードに背中を預けつつ、紫煙をくゆらせている。

「……まあな」

「まあな、って何よ」

「そのまんまの意味だろ」

紫苑は少しだけ口角を上げる。

「それって、つまり適当に扱えるってこと?」

甚爾は鼻で笑った。

「お前、そう思ってんの?」

「どうかしら」

紫苑は起き上がると灰皿にタバコを押し付け、ゆっくりと彼の肩に頬を預けた。

「私は?」

「何が」

「私といるとき、あんたは私をどう思ってるの?」

甚爾は煙を吐き出しながら、紫苑の髪を指先で弄ぶ。

「どうって……」

少し考えてから、気だるげに言った。

「居心地いい」

紫苑は微かに目を細める。

「それ、本当?」

「さあな」

また、それ。

都合のいい言葉を、適当に並べる。

でも、それを言われると、紫苑は何も言えなくなる。

「……まあ、いいけど」

紫苑は体を少しずらし、甚爾の腕に手を滑らせた。

「ねえ」

「ん?」

「もし、あんたが私より先に飽きたら、ちゃんと言ってね」

甚爾はタバコを灰皿に落とし、紫苑の頬を指先で軽く撫でた。

「お前が飽きる方が先じゃねえの?」

「どうかしら」

紫苑は微笑む。

「でも、私、意外と執着するタイプかもしれないわよ?」

「それは困るな」

「そう?」

「めんどくせえ女は、好きじゃねえんだよ」

紫苑は目を閉じた。

(めんどくさい女にならないようにしてるの、気づいてる?)

口に出さずに、そのまま黙る。

甚爾はシーツの上で紫苑の指を軽く握り、何も言わないまま目を閉じた。

紫苑はその仕草を見ながら、ゆっくりと意識を夜の闇に沈めていった。
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