第3章 辛苦
すると彼女はなにも言わずに耳に手をあてた。
「保科、西野、今すぐ隊長室に来い。」
「なっ、隊長!?」
約束してくれたのでまさか2人を呼ぶとは思わずに、口を挟んでしまった。
大丈夫だ約束は守るとだけ言って微笑んでくれた。
隊長としても、保科副隊長を失いたくはないだろう。
「三浦は保科が好きなのか?」
突然の隊長のその言葉に驚き声を大きくしてしまった。
「えっ!?いやっ…いえっ、好きですっ!!」
「ふふふっ、そうか。」
私の酷い返しにも笑ってくれて、本当に亜白隊長はいい人だなと思い、綺麗な笑顔をボーッと眺める。
見惚れていたら扉の奥から声が聞こえた。
「亜白隊長、保科です。」
今の聞かれてないよね!?
タイミングが良いのか悪いのか……保科副隊長の登場に焦ってしまう。
焦ってしまうのはそれだけではないが…。
亜白隊長にあのことを話してしまった。
気まずくて彼の顔を見れない。
亜白隊長の目の前を陣取っていたが、少し後ろに下がり場所を譲る。
彼が上官である以上私は後ろにいなければ…。
そしてすぐに西野先輩も来る。
隊長は真実を確かめる為にすぐに先輩を問い詰める。
どうやら先輩はいつも私が誘うように見てくるから勘違いしたと…。
もちろん私はそんな目で先輩を見ていない。
全て彼の勘違いだ。
隊長は私の想いを知っているからか、私を信じてくれた。
黙って私たちの会話を聞いている副隊長の方を見た。
ビクともせず、目を開いてこっちを見ている。
「西野隊員、お前を除隊に処す!」
除隊になるのか…しょうがないか、それだけのことをしたのだ。
既婚者である彼が後輩を犯そうとした。未遂であってもそれは許されることではない。
奥さんに除隊理由を話さないということで話は纏まって、西野先輩は戻された。
明日正式に除隊となるだろう。