第3章 お願い先生っ! 五条×生徒
「……せんせ?」
私は後ろを見上げた。
「僕たち、いずれ結婚するでしょ?」
「…は、はい。」
そんなことを五条先生の口から直接私に言われたことがなかったから驚いた。
「でも、まだ君は学生で、僕のことで縛りつけちゃうのが悪いと思って、学校では好きに青春してくれたらいいやって思ってた。」
「……?」
好きに青春ってなんだろうかと私は首を傾げた。
今好きにさせてもらってる。
花嫁修行をするでもなく、五条家での立ち振る舞いとかもまだ何も知らない。
楽しく学校生活を送れてる。
「だから、憂太と何があっても気にもしないと思ってたんだけどなー。」
「せんっ……」
五条先生は窓枠に手をつき、見上げる私のおでこにこつんとおでこを当ててきた。
もう、パニックだった。
ずっとずっと好きだった人が触れるくらい目の前にいる。
「憂太、好き?」
「…えっ?それはどういう…?」
友人としては、好きだ。尊敬だってしてる。
ただそれだけ。
「いや、やっぱりだめ。言わなくていいよ。」
五条先生は、私の口を塞ぐように親指を私の下唇に触れた。
心臓の音が響いて耳が痛い。
固まって動くことができない。
何も考えられない。
ただゆっくり近づいてくる五条先生の顔にぎゅっと目を閉じることしかできなかった。
ちゅ。
と、音を立てて柔らかい感触がしたのはおでこだった。
「あっぶな。だめだめ。」
五条先生はぶつぶつと呟きながら、私から離れた。
「……?」
「流石にね。卒業してから。」
人差し指を私の唇にむにっとあてて五条先生はにこっと笑った。
「……だめですか?」
私は少し背伸びして近づいてみたけれど、先生はぽんっと私の頭を撫でて笑うだけだった。