第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
一日中広い敷地を歩いて、私は心身ともにクタクタだった。
体力はある方だが、緊張なども重なって疲れ切っていた。
「今日は寮の食堂で夕食たべて、そのまま寮で休んでくださいね。」
「はーい。」
春風先生に言われ、私たちは解散になった。
「もう18時になるのかー。食堂いく?」
灰原くんに言われ私たちは頷いた。
よかった、この流れは私も一緒に行っていいみたいだ。
女子一人だから食事とかもずっと一人かと心配していた。
「おい。」
三人並んで食堂に向かっていると後ろから声をかけられ振り返った。
白髪男と黒髪男だ。
うげっと私は顔を顰めた。
「あからさまな顔すんなよクソ女。」
「すみません。」
上級生の特級術師と聞いて私は目を逸らし、前を向いて食堂に歩き出した。
「おいって言ってんだろ。」
「なんでしょう。」
「……。」
頭をかきながら近づいてくる白髪男に、私は眉を寄せた。
「あ、お金。返します。」
私はカバンをあさってぐしゃぐしゃになった5千円札を取り出し、差し出した。
「きったな。」
「あの時かーっとなってお金とってすみません。」
私は白髪男の胸に押し付けた。
「…金はいいんだけど。」
「悟。そうじゃないだろ。」
近くにいた黒髪男は白髪男にいった。
「ごめんね。制服汚して。つい新入生がくるって言うのではしゃぎ過ぎてしまった。僕も止めなかったから。」
黒髪男は私と七海くんに向かって謝罪をした。
「いえ、僕は…もう気にしません。」
七海くんは謝罪に驚いたのか、小さな声で言った。
「私もやり返してすみませんでした。」
白髪男の手に無理矢理5千円を握らせ、そう言った。
「わ……悪かったな。」
「うっわ。」
こちらを見ようともせず、言わされてる感満載の謝罪に私はつい声を出してしまった。
「なんだよ、謝ったろ。」
「幼稚園児でももっとまともに謝ります。」
「あぁ?」
だめだ、この人に期待しても無駄だ。
私はため息をはいた。
「もういいです。上級生だと知らず生意気いってごめんなさい。えっと…」
私は白髪男に背を向け、黒髪男に話しかけた。