第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
「こんの…くそ…おんなぁ…」
肩をプルプルと震わせサングラス越しに睨みつけてくるが、私は鼻でふんっと笑ってやった。
「悟。やめとけ。」
黒髪の男が白髪男の肩に手を置いたが、白髪男はその手を振り払った。
「おい!!悟!!何やってんだ!授業始まってるだろ!!」
バン!!と後ろのドアから入ってきたガタイのいい先生に、二人の男は飛び上がった。
「やっべ、バレた。」
「硝子が言ったかな。帰るぞ悟。」
白髪と黒髪は先生が来たドアとは違うドアから出て行こうとしていた。
「おい!女!覚えとけよ!」
「あー、忘れた。」
「くっそ女!!」
また投げてきたチョークをひょいっと避けつつ、私は耳を指で閉じた。
バタバタ出ていった教室は急に静けさを取り戻した。
「きみ…すごいね。」
ーーー…しまった。
第一印象を大切に。なんてもう無理だ。
髪の毛と制服がいまだに白い金髪の男子生徒と、お目目がおっきい優しそうな男子生徒は、私をドン引きで見ていた。
「あ…えっと…。」
「でも、ありがとう。お礼はいっておく。この5千円は彼に今度返すよ。僕はクリーニングは必要ないから。」
「…ごめんなさい。つい、頭に血が上って。私が返すよ。」
私は5千円を彼の手から奪い、カバンに突っ込んだ。
「あの…騒がせてごめんね。初めまして、といいます。よろしくお願いします。」
笑顔を浮かべ軽くお辞儀をするが、時すでに遅しである。
「あ、あぁ、よろしく。七海建人だ。」
「僕は灰原雄。ほんと君すごいね!怒らせないようにしないと!はは!」
「いやいや!いつもあんなんじゃないですから!本当に…」
本当にやらかした。
親は二人して根っからのヤンキー。
それが普通だったけれど、私はそんなでもないはずなのに…!つい!あの白髪男に腹が立ってしまったのだ!