第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
「あ、カーディガンと、今日のお稽古ありがとうございました。そうだ実家からお菓子とか送ってもらったんです。食べていきますか?」
「…だから、あんまりそうやって信用して男の人を部屋に入れちゃダメだって。」
今言ったのに…と、言われたけれど、やっぱり私にはわからなくて夏油先輩の顔を下から見上げた。
「夏油先輩もダメなんですか?」
「…。」
「私は夏油先輩ならいいと思ったのに…」
夏油先輩は片手で自分の顔を覆うと、急に顔を背き、部屋から出て行こうとした。
「お菓子は、また今度…貰おうかな。」
「はい、ぜひ!」
ドアを開け、夏油先輩を近くまで送ろうとしたら、廊下の奥から五条先輩がいて、こちらに気づいたようだった。
「おう、傑。の部屋で稽古?やるねー。」
「バカなこと言ってないで、悟だって、ここ女子寮だろ。」
「俺は硝子に借りてた漫画返しに来ただけだよ。それより、今日夜任務だし、早めに飯行こうぜー。」
「そうだな。食べておくか。さんもいく?今日は休みだから食堂じゃなくて、外に食べに行くけど。」
夏油先輩の提案に私は首を振った。
「休みの日は自炊してるんです。お昼前には唐揚げの下準備済ませてて…。誘ってくれてありがとうございます。」
私はまだバイトも何もしていないから、そんなにお金に余裕はない。
できる日はなるべく自炊を心がけているのだ。
「唐揚げぇ?」
「そーですよ。昨日誰かに食べられたからあれから唐揚げ食べたくて自分で作ることにしたんです!」
五条先輩は顎に手をやり、私に大股で近づいてきた。
「それいっぱいあんの?」
「…何袋か作って、ストックにしてますけど。これから冷凍する予定です。」
「俺らの分もある?」
「な、ないです!だめです!」
「えー、いいだろ?」
ガシッと私の肩に手を回し、私の部屋の中に一緒に入ろうとしてくる五条先輩に、私はため息をついた。