第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
夏油先輩の腕を掴み、そう言うと、夏油先輩は立ち止まって私を驚いた顔で見下ろした。
「あ、用事。ありました?」
「いや、用事……はないけど。」
少し言葉に詰まっている夏油先輩に首を傾げつつ、私は女子寮に案内した。
「さん…。えっと…」
「私の部屋ここです。どうぞ?」
「は、入るの?」
「え?どうぞ?」
何を驚いているんだろうかと思ったけど、すぐすむ用事なので、私は気にせず奥のベッドに乗った。
「さん!」
「…へ?」
私は窓を開け、外に干して置いたカーディガンを取ると、ベッドから降りた。
「………さん?」
「はい?あ、これ昨日借りてたカーディガン。朝から洗って干してたんです。よかった、乾いてる。」
「あ…カーディガン…ね。」
ハンガーからカーディガンをとり、ベッドの上で綺麗に畳むと、紙袋にそれを入れた。
「昨日、助かりました。ありがとうございます。」
「いや。洗ってくれたんだね。ありがとう。」
紙袋を手渡すと、夏油先輩は私の手をとった。
「だけど、さん。」
「はい。」
「ダメだよ。女の子が一人でいるときに男を部屋に入れちゃ。」
「…?」
私が首を傾げると、夏油先輩ははぁっと頭を抱えてため息をついた。
「ご、ごめんなさい。」
怒らせたと思って私は咄嗟に謝ったが、夏油先輩は首を振った。
「いや、謝らなくていい。…さんは、彼氏とかいたことないの?」
「えっ!?ないない!まだ一年生ですし!」
「そっか、なら本当に気をつけて。」
「…?は、はい。」
何を気をつければいいかわからなかったけど、私はとりあえず返事をしておいた。