第5章 ウザい上司 五条×補助監督(R18)
時計の長針は、ほぼ真上に行きかけていた。
は木の床に座り込んで、五条のベッドに頭を預けた。
「おめでとうって言いたかったなー…」
昼間に言えばよかったと、はため息をついた。
そして泣きそうになるのをグッと我慢するために、五条の布団に顔を押し付けた。
(五条さんの匂いがする…)
大きく息を吸い込むと、後ろのドアが開く音がしては勢いよく振り返った。
「あれ?何してるの?。ーー…僕のベッドで。」
「五条さん!」
は慌てて立ち上がった。
五条はポケットに手を入れたまま、口元を緩ませてに一歩一歩近づいた。
「なーに?食べられにきた?」
「違います。」
はキッパリと言い切った。
五条はガクッと肩を落とし、の頭を撫で始めた。
「こんな遅くに僕の部屋なんかきたら食べちゃうぞ。」
はそんな五条の言葉を無視して、コンビニの袋から二つ入りのチョコケーキを取り出した。
プラスチックのケースに入った、とても大人の恋人同士が祝う時に食べるケーキとは思えないケーキを。
「ん。もしかして。」
「はい。誕生日おめでとうござ……いました。」
は時計をみて、すでに12時を回っていることに気がついた。
「…ごめんなさい。」
「ん?なにが?ありがとうだよ。」
五条はからのケーキを受け取り、舌をぺろっと出した。
さっそくここで食べてしまうようだ。
「五条さんの誕生日、知りませんでした。」
「うん。伝えてないからね。」
大きなスプーンでばくっと頬張る五条は、特に気にしていないようだった。
「資料はもってるので、知ろうと思えば私は知り得た情報です。もっと…あなたを知ろうとするべきでした。」
「いいよ。はそのままで。まぁ僕を知りたいって思うことは大歓迎だけどね。はい、あーん。」
「むっ!むごっ!……ちゃん…と…もご。祝いたかったです…」
ケーキを口に押し込まれ、もごもごしながらはしょんぼりとしていた。