第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
私は瞬きを繰り返した。
「え、夏油先輩が?」
「そうだよ。呪霊操術の術師だよ。」
「えっ、えっ!会いたかった!すごい!」
私はぴょこっと立ち上がりあわあわと慌てた。
憧れの術師がここにいる。
「あ、握手してくだ…さっ!」
噛みながらも、両手を差し出した。
「それは照れるな。いつも通りにしてよ。」
夏油先輩は私の指先を握り、私を座るよう促した。
緊張でドキドキする。
私がみてきた資料や本には、式神使いや憑代を使った術などがあり、その中でも最高の術式とされていたのが呪霊操術だ。
ーー…使役する。
呪霊が助力してくれる私とは違って、彼は完全に使役している。
そこにまず大きな差がある。
みてみたい!
「あの…今度…よければ…なんですが…」
不躾だけど、やっぱり見てみたい。
私は遠慮がちにぽそぽそ声に出した。
「あぁ、いいよ。今度一緒に稽古場借りてやってみようか。」
「ありがとうございます!」
私はよしよしとガッツポーズを何度もした。
「といっても、私も取り込むには色々条件があるというのは同じだからね。そうだね…うーん。」
夏油先輩立ち上がり本棚に向かって歩き出した。
手招きされたので、私も彼に続くと、私がさっきまで見ていた本を指でなぞっていた。
「そうだね。これと。これと…それからこれ。」
私の手にどんどん置いて行く。
「あと、この方の論文は役に立つかどうかは別として、契約後の呪霊のあり方とかあって読んでて楽しかったからおすすめ。」
「この辺りは全部読んだんですか?」
「そうだね。」
「凄い…!」
「私は呪術師の家系ではなかったし、近くに天才がいるからね。必死だったんだよ。」
天才?
「あー、あの特級術師の?あの人も凄いんですね。」
「ぷっ。」
「…?」
「急に興味なさそうに行くから。」
「ないです。私を粉まみれにしたから根に持ってます。…許しはしましたけど。」
「ははっ。」
手を口にやり、声をあげて笑う夏油先輩に私は目が釘付けになってしまった。
真っ黒な髪の毛に夕日の紅があたって、それが私にはとても輝いてみえたーー…。