第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
とある日、私は図書館で資料を探していた。
自分の術式についてもっと深く理解して使いこなしたいと思ったからだ。
「えっとー…呪霊の操り方…呪霊を従えさせる方法…うーん…何がいいかなー…」
「何探してるの?」
「あ、夏油先輩。」
同じ棚の先の椅子に座って、ノートと本を広げている夏油先輩。
「すみません、誰もいないと思って。うるさかったですね。」
「構わないよ。何の本?」
「呪霊操術について知りたくて。どの本がわかりやすいかなって。」
「…へぇ。なんでそれについて知りたいの?」
夏油先輩は自分の横の椅子の荷物をどけ、椅子を引いた。
そこに座れということだろう。
私は、素直に夏油先輩の横に座った。
机に広げてあるのは報告書だった。
「もう、任務行ってるんですね。」
当たり前か一級術師だもんね。
「あぁ、報告書なんだけどね。特殊な呪霊だったから、どう書き表そうか調べてたんだ。」
…凄い。
私はまだ一度も任務は行っていない。そろそろだとは思うけれど…。
夏油先輩は、調べていた本をパタンと閉じて、私をみた。
「で、呪霊操術の何が知りたいの?」
「私の術式なんですけど、呪霊と契約を結んで仲間にすることができるんです。…ただ、まだまだできないことが多くて。」
私の術式は自分の血を呪霊に飲ませ、相手の体の一部を私に取り込むことで、契約が成立し、
以降私を手助けしてくれる術式だ。
ただ弱い呪霊はそれを簡単に行えるが、強い相手となると、自分の血を飲ますどころか、相手の体の一部をもらうことさえできない。
「確かに呪霊操術と似ているね。」
「そうなんです。ここ高専に呪霊操術の術師さんがいるってのは聞いてたんですけど、まだ会えたことなくて。とりあえず調べようかなって。」
机に頬杖をついて、夏油先輩が私をにっこりと見た。
「その術師、私だね。」