第4章 私の恋 高専夏油
「じゃ、報告書は俺が書いとくから。」
高専の敷地内について、五条先輩が言った。
「はい、ありがとうございます。今度ーー…」
「今度たこ焼きよろしく。」
何かお礼をと思ったら、五条先輩が先に要求してきて、私は微笑んだ。
きっと夏油先輩から聞いたんだろう。
「チョコ入れたり、キムチやお餅いれて色々アレンジしたのも食べましょ。」
「はぁ?チョコー?」
「知りませんね?お出汁とチョコで中がとろっとして意外と美味しいんですよ。」
「へー。みんなとやろうぜ。」
にかっと笑う五条先輩は、本当にみんなと遊ぶのが好きなんだろう。
私はそんな五条先輩と別れ、寮へと向かった。
意外と遅くなった。
私は寮の建物に入り階段に向かった。静かな時間。みんな任務か寝静まっている時間だ。
ふと、一階のまっくらな食堂に大きな塊があるのに目が入った。
誰か机に座って伏せってる。
もしかして体調を崩した誰かかもしれないと、私は静かに近寄った。
「せ…んぱい…?」
机に伏せて寝息を立てる夏油先輩だった。
お風呂上がりのままだったのか、首にタオルをかけ、髪の毛は下ろしたままの夏油先輩が机に手を置き座ったまま眠っていた。
ーーー…なんでこんなところで?
まさか、私と五条先輩を待っていた。なんてこと…
「ないか。」
私は起こさないよう小さく言った。
起こした方がいいだろうか。
このままにしておくことはできないし。
私はそっと夏油先輩の顔をのぞいた。
髪の毛が下りていてあまり見えない。
「…髪長い」
ぽつりと呟いて私は顔にかかった髪の毛をそっと避けた。
伏せられた瞼。
いつもあるあの前髪が一房垂れた。
ーー…かっこいい。
やっぱり、私と五条先輩を待っていてくれたのかな。…そうだといいな。
「…せんぱい。」
ドキドキする。
先輩のそばにいるだけで、こんなにも胸が熱くなって、動悸がおさまらない。
『まさか、好きかどうかわかんなーい。なんてこと言わないわよね。』
夏祭り前に硝子先輩に言われた言葉を思い出した。