第4章 私の恋 高専夏油
あの時はまだよく分かってなかった。
先輩といて楽しかったし、話をしていても楽しかった。
呪霊操術だからーー。
最初はきっとそうだったかもしれない。
憧れの人。
昨日夏油先輩から、五条先輩をおすすめするよって言われてショックだった。
それってやっぱりーー…
「先輩……」
私は触れないように先輩の前髪あたりに指先を伸ばした。
「ーーー…好き。」
ぽつりと出てしまった言葉に私は自分の口元を押さえた。
私は数歩さがると、携帯を取り出した。
「あ、もしもし五条先輩。食堂来てもらえませんか?…はい。…夏油先輩が…お願いします。」
私の電話での話し声に反応した夏油先輩がもぞっと動いて、私は慌てて食堂を後にした。
今、私は平常心で夏油先輩の顔を見ることはできない。
ドキドキする胸をぎゅっとおさえ、私は自分の部屋に駆け出した。
私の恋 (自覚編 完)