第4章 私の恋 高専夏油
「それで、なんでそんな心あらずなんだよ。せっかく二級討伐できたのによ。」
次の日の昇級試験は、本当に一瞬で終わった。
呪霊の体の一部を切り取り、私の凍った血を口に投げ込み終了。
丸々と太った、団子のようなわたしより大きな呪霊は、すで私と契約を結び、仲間となった。
その昇級試験の帰り、五条先輩はダルそうに言った。
「いえ、すみません。私はどうでした?」
「こんな数秒で終わる試験ねぇだろ。たぶん昇級すんだろ。俺が報告書あげて学長が判断すると思う。」
「…よかった。」
私は胸を撫で下ろした。
「で?それとは別だろ?なんかあった?」
「…あー…えっと、あの浴衣を五条先輩に着せてもらったじゃないですか。」
「おー。」
「夏油先輩、それ気付いてて…それで、なんかわたしが五条先輩を好きだと思ってるみたいです。」
「はぁ?なんで?硝子にだって貸したじゃん。」
「五条先輩にはよく稽古もつけてもらってますし。」
「あー、昨日とか?」
「はい。」
高専への帰り道、私も五条先輩はとぼとぼ歩きながら話した。
もう夜もふけて辺りは真っ暗だ。
「夏油先輩に、おすすめされちゃったんです…」
「ん?なにを?」
「五条先輩を。」
「あ?」
「いいやつだよって。」
「ちっ。」
五条先輩は盛大に舌打ちをした。
そりゃそうだ。
五条先輩の意思を無視した行為だ。
「私にだって選ぶかわりありますよね。」
「おい。」
ごつっと軽く頭を殴られ、私は笑った。
「こっちだって願い下げだっつの。口悪い女なんか。」
「んだと。」
私は五条先輩の脇腹を肘で殴り返した。
「まぁ、あれだ。きっとやきもちだな。」
「えー?夏油先輩に限ってないですよ。」
「そうかー?あいつ独占欲つよそうじゃん。少なくともお前のこと好意的に見てると思うけど、傑そういうの言わねぇからな。いちいち俺も聞かねぇし。」
「恋愛話とかしないんですか?」
「しねぇよ。エロ本の貸し借りくらいだよ。」
「さいてー。」
けけっと笑う五条先輩に私はため息をついた。
やきもちだなんて夏油先輩は絶対にしないタイプだと思ってる。