第4章 私の恋 高専夏油
私は先輩の手を両手でがっちりと握りしめた。
「先輩っ!ありがとうございます!」
「う、うん。」
「これならどうにか出来そうです!」
私は嬉しくて先輩の手をぶんぶんと握り、振り回した。
「閃いたようでよかった。」
「先輩のおかげです。今度お礼させてください。今はちょっと練習してきます。」
「いってらっしゃい。昇給試験のことはまた連絡するから。」
「はい!」
私はバタバタと荷物をまとめ、自分の血の入ったビーカーを持つと、図書館を後にした。
■□■□■□■□
それから数日間、私は実験室やら訓練場に通いっぱなしだった。
訓練室で契約した血を凍らせることのできる呪霊を取り出し、練習をしているところだった。
会話はできないほどの低級の呪霊だ。
虫のように飛び回わり、コウモリのような羽をしていた。
意思疎通は言葉でできないけれど、私が思った時に出てきて、素早く私の血を凍らせてもらいたい。
それならば、こうして信頼関係を築いておいたほうがいい。
「私は夏油先輩みたいに、使役して操ることができないから…。」
呪霊が私の頭の周りを飛び待っているところに、血の代わりに水をかけ凍らせてもらい、練習をしていた。
「よ、。」
「五条先輩。」
「明日、行けそうか?」
「…?」
何か約束をしていただろうかと私は首を傾げた。
どこに行くのかーー…
「昇給試験だよ。二級にあがるんだろ?」
「え?明日ですか?」
「そ。二級のちょうど良さそうな呪霊が出てきたから行くぞ。」
「五条…先輩と?」
夏油先輩と行くのかと思っていた私は口を尖らせた。
「推薦が傑なら、試験は傑以外じゃないとダメなんだと。傑も知らなかったみたいで、代わりに俺が行くことになった。んま、二級なら余裕でしょ。明日ちゃちゃっと終わらせよーぜ。」
「…先輩、大丈夫ですか?」
「は?俺特級だって。」
「いや、そうじゃなくて試験管としてちゃんと私を見てくれるのかな…って。」
「てめっ!」
わしゃわしゃ!っと髪の毛を乱され私はその手から逃げながら笑みをこぼした。
試験と聞いて緊張していたけれど、五条先輩とならなんとなくうまくいきそうな、そんな気がした。