第4章 私の恋 高専夏油
黒く斬新なデザインの先輩のミュージックプレイヤーに私は釘付けになった。
そんな私に先輩は笑いながら見せてくれた。
私はiPod nanoを手に持ちまじまじと眺めた。
「先輩は何聴くんですか?」
「んー、色々かな。その時の流行りを適当に。オレンジレンジとか。」
「あ、私も知ってます。いい曲ですよね。」
「聴く?」
先輩が片方のイヤホンを差し出してきたけど、さっきみたいに頬を寄せ合ってイヤホンを一緒に使うことが、私にはもうできなくて、首を大きく振り、nanoを机に戻した。
「照れなくていいのに。」
「……!」
照れてることがわかっててやる夏油先輩は意地悪だ。
「は何使ってるの?プレイヤー。」
「私は母のおさがりなのでMDプレイヤーですよ。でも中学の時から使ってるからお気に入りです。」
「私も中学の時使ってた。MDもいいよね。本当に好きな曲を自分の好きな順に入れてたよ。」
古いからと馬鹿にしない先輩。
本当に優しくて…やっぱり私、先輩のことーー…
中学の時に聞いていた音楽の話をしている先輩の横顔を見ながら、私はドキドキする胸にそっと手を当てた。
「血液について調べてたの?」
「はい。」
先輩が私の手元をみて言った。
「確かに加茂家なら血を飲ませるのは簡単だろうね。」
夏油先輩は私の積み重ねている本を手に取り、パラパラとページをめくった。
「でも私の術式ではどうにもできなくて。」
「の術式でしか出来ないことがあるんじゃない?」
「私にしかできないこと…?」
「そう。は契約した呪霊と一緒に戦えるんでしょ?」
先輩の言葉に私は黙り込んで考えた。
私の術式…
私が契約している呪霊たち…
「私の契約してる呪霊に、物を凍らせることができる呪霊がいます。」
「使えそうだね。」
「…でもとっても弱くて凍らせる力も、そんなになくて…雹みたいなそんな…小さな…」
私は考えながら、ぽつりぽつりと言葉にした。
「うん。」
小さくていいんだ。
弱くていいんだ。
私の血液をその場で小さく凍らせて敵の口に放り込むだけでいいんだから。