第4章 私の恋 高専夏油
次の日。
私は図書館でビーカー片手に本に齧り付いていた。
ビーカーの中には私の血が少量入っている。
この血をどうにか薬のようにカプセルに入れるか、固まらせるかして持ち歩きたいのだ。
「加茂家の術式が使えたらなー。うーん。」
血の術式について書かれた本を何冊か読んだが、私にはできそうになかった。そもそも生まれつきの術式なんだから、私には無理に決まってる。
科学の力でどうにかできないか調べたり、硝子先輩にも協力してもらっている。
ぺらっと、血管について書かれたページをめくっていると、肩をたたかれ私は後ろを振り向いた。
「先輩っ。」
私はつけていたイヤホンを右耳だけ外した。
「すみません、音楽聴いてて…」
「だね。話しかけても振り向かないはずだ。」
どうやら後ろから私に話しかけていたらしい。
集中したくて両耳を塞いでいたから、気付かなかった。
私は慌てて音楽を止めようとしたら、先輩が私の横に座り、手から外していた右耳のイヤホンをとって、自分の右耳につけた。
「…ちっ!!」
私の左耳にはまだイヤホンがついてる。
必然と先輩の頬が至近距離になって私は、“ちかい!!”と叫びそうになった。
「何聴いてたの?」
「あっ…!えっ!?」
ダイレクトに響く先輩の声。
イヤホンのコードのせいで動けない。
先輩に何か聞かれたけれど、私の頭には入ってこなくて私は答えることができなかった。
「んー、ピアノ?」
「は、はいっ。ラフマニノフ…です……」
「すごい…激しい音楽だね。」
イヤホンに手をやり、夏油先輩はさらに近づいてきた。
肩と肩が触れ合うくらいーー…
「クラシック好きなんだ。」
「今度ドラマになるクラシックの漫画があって…それが好きで作中にある曲聴いてたんです。だからそれ以外はそんなに知らないんです。」
「へぇ。その漫画面白い?」
「はい!とっても!音大の女の子お話です。先輩と恋したり、音楽に熱中したり。」
「へぇ、先輩と恋かー。」