第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
私が呆けていると、白髪男は私を睨んだ。
「んだよ。聞いてんのか。」
「あっ、はい。すみません。ありがとうございます。」
ーー…まさか指南をいただけるとは。
無茶苦茶で、出鱈目に強いんじゃなくて、ちゃんと私を見てくれてたことに驚いてしまった。
「今失礼なこと考えてるだろ。」
「いえっ。」
バレた。
顔に出てしまったらしい。
「悟は言い方ひどいし、無茶苦茶だけど、実は後輩ができて嬉しいのさ、な?」
「うるせぇな。」
夏油先輩が白髪男の肩を抱いて揶揄ったが、照れながらその手を振り払っていた。
後輩ができてテンション上がってやることが、黒板消しを頭に落とすことなのが、急に子供っぽく感じて、私はつい笑ってしまった。
まぁ、忘れることはないし、きっと根に持つけれど。
ーー…許してやるか。
「先輩、後でまた稽古お願いします。」
「…おぅ。」
こちらを見ることなく、白髪男は小さく返事をした。
よくよく考えたら特級や一級の人に教えてもらえるのはありがたいことだ。
2人は術式が凄いのだろうか。
これからの任務も一緒に行くことがあれば、見てみたいと思うのだった。