第4章 私の恋 高専夏油
神社の石垣に腰掛け、私たちは各々好きなものを食べていた。
「ゆうは何食べてるの?」
横に座っていたゆうに私は話しかけた。
紺の甚平を着ているゆうは持っていた小さな紙袋を私に見せてきた。
「ベビーカステラだよ。食べる?」
「ありがとう。」
私は手を入れひとつ貰って口に放り込んだ。
まだ温かくてふわふわのカステラは香りもよく美味しかった。
「ななみんは…あっ、ななみんイカ焼き食べてる!売ってた?」
ゆうとは対照的な白の甚平のななみんは、手にあるイカ焼きを私に見せてきた。
「あっちのほうで売ってたぞ。」
「行かなきゃっ!」
お祭りでよく見てはいたけど、食べたことなかったイカ焼きを求め、私は立ち上がった。
「俺も食いたいからいくー。」
ぺろっとりんご飴を食べ切った五条先輩が立ち上がった。
私は一緒に行こうと、五条先輩が来るのを待っていたが、急に座っていた硝子先輩が五条先輩の袖を引っ張った。
「喉乾いたー。」
「あ?」
「五条、みんなの買うから待つの手伝ってくんない?」
「別に、いいけど。」
硝子先輩に頼まれ、五条先輩はちらっと私を見た。
イカ焼きが名残惜しいらしい。
「あ、じゃあ五条先輩の分も買ってきますね。」
私が言うと、五条先輩は私に千円札を一枚渡してきた。
「まじ?じゃあこれで頼むな!」
「はい。」
「じゃあ、私がついていくよ。」
立ち上がった夏油先輩に私はどきっとした。
また一緒に歩けるのかと思うと嬉しかった。
五条先輩から預かったお金を小銭入れにしまっていると、五条先輩の前にいる硝子先輩が私に向かってウインクをした。
「…っ!」
その合図がどういう意味かすぐにわかった。
夏油先輩と二人にしてやったから、告白でもしてこいって意味に決まってる。
「いこっか、。」
「あ!はいっ!!」
夏油先輩に声をかけられ無駄に大声で返事をしてしまい、私は一気に恥ずかしくなってしまった。