第4章 私の恋 高専夏油
あっここっち歩き回る五条先輩の全力で遊ぶ姿を見て、私も楽しもうとりんご飴の屋台の前にいた。
「大丈夫?疲れてない?」
「え?」
りんごにしようかいちごにしようか悩んでいたら、夏油先輩が私の横にやってきて言った。
「全然っ。めちゃくちゃ楽しんでます。お祭りってこんなに楽しいんですね!」
「よかった。」
「先輩もりんご飴ですか?」
「悟に頼まれてね。今頃硝子とわたあめでも食べてるんじゃないかな。」
「ずっと食べてる…」
「はは。」
底なしの男の子の胃袋に驚きつつ、私は小さいいちご飴にしようと決めた。
たぶん見てるだけでお腹いっぱいになりそうだった。
「さっき、七海たちも来て今焼きそばとか食べてると思うよ。」
「よかった、合流できて。」
屋台に並んでる人達が少しずつ進んでいく。
その時間すら今の私は楽しかった。
「後で盆踊りとかもあるみたいだよ?踊る?」
「えっ!?私は…いいかなー。え?みんな踊るんですか?え…?私も踊る…?」
「いや、まさか。」
くくっと笑う夏油先輩に揶揄われたんだと気付き、私は頬を膨らませた。
「ごめんごめん。あ、おじさん、りんご飴といちご飴ひとつずつ。」
「はい。ひとつずつねー。」
夏油先輩が頼むのを横で見ながら、自分のお金を用意していると、目の前にいちご飴を差し出された。
「はい。の。」
「え?」
今から自分の分を注文しようと思っていたのに、夏油先輩に差し出されて私は驚いた。
だって、私はいちご飴を頼むなんて一言もいってないのに。
「あれ?違った?りんごだった?」
私はいちご飴を受け取り首を振った。
「…いちごの予定でした。」
「よかった。当たった。」
目を細めて笑う夏油先輩を私は見上げた。
「ならいちごかなって。」
「なんで…?」
「なんとなく。色々食べたそうだったから大きいりんごより小さないちごかなって。」
その通りだ。
まだイカ焼き食べてないし…。
「イカ焼きも食べないとだしね。」
「…っ!」
今まったく同じことを考えたことに驚いて私は顔が熱くなった。
「……ありがとう、ございます…」
「どういたしまして。」
私は先輩に買ってもらったいちご飴の竹をぎゅっと握りしめた。